政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
貴俊の愛を疑う要素はなにひとつない。明花だけが愛されていると実感する日々なのだから。
不思議な事態を前にして困惑していると、貴俊が大きな包みを手にして帰宅した。
「ただいま、明花。……なにかあったのか?」
明花の表情ひとつで察するのは相変わらずである。
「貴俊さん、これって……」
ダイニングテーブルに並べた指輪を指差すと、貴俊は盛大に目を開き大股でやって来た。
「どうして同じものがこんなにあるんでしょう」
貴俊は、開いたままになっているキャビネットの引き出しを振り返り、頭を掻きむしった。
決まりが悪そうなのは一目瞭然だ。
「婚約指輪だ」
「そうですよね、私が持っているものと同じです。だけどどうして?」
「明花の指のサイズをリサーチし損ねたから、平均的なサイズを四つ作って、ね」
それはとんでもない打ち明け話だった。