政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「いいえ、とても興味深いお話なので私も楽しいです。どうかお気になさらないでください」


明花自身、わけあっていろいろな業種を渡り歩いてきたため、特に知っている業界の話題は楽しく聞いていた。


「それはよかったわ。明花さんは聡明な方なのね」
「いえ、決してそのようなことは……」


ただ楽しんでいただけで、深い造詣があるわけではないと謙遜する。


「素敵なお嬢さんとのご縁、深く感謝いたしますわ」
「もったいないお言葉です」


かしこまって返しつつも、秋人はどこか誇らしげだ。娘を褒められて嫌な気持ちになる親はいないだろう。


「雪平さん、私たちがいると仕事の話になってしまうかもしれませんし、明花さんと貴俊だけでお話しするのはどうでしょうか」
「そうですね、そうしましょう」


八重の提案に秋人も快く頷く。
ふたりきりはちょっと……と及び腰になったが、当事者は自分だと明花はすぐに気持ちを切り替えた。
< 31 / 281 >

この作品をシェア

pagetop