政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「いいえ、とても興味深いお話なので私も楽しいです。どうかお気になさらないでください」
明花自身、わけあっていろいろな業種を渡り歩いてきたため、特に知っている業界の話題は楽しく聞いていた。
「それはよかったわ。明花さんは聡明な方なのね」
「いえ、決してそのようなことは……」
ただ楽しんでいただけで、深い造詣があるわけではないと謙遜する。
「素敵なお嬢さんとのご縁、深く感謝いたしますわ」
「もったいないお言葉です」
かしこまって返しつつも、秋人はどこか誇らしげだ。娘を褒められて嫌な気持ちになる親はいないだろう。
「雪平さん、私たちがいると仕事の話になってしまうかもしれませんし、明花さんと貴俊だけでお話しするのはどうでしょうか」
「そうですね、そうしましょう」
八重の提案に秋人も快く頷く。
ふたりきりはちょっと……と及び腰になったが、当事者は自分だと明花はすぐに気持ちを切り替えた。