政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

あまりにも定番過ぎて大後悔だ。仕事の話のあとだけに、もっと気の利いた質問はなかったのかと肩身が狭くなる。頭の中はさらに真っ白になってしまった。


「一緒に生活するうえで大事だと思いますよ」


貴俊はさらっと核心を突いた。

(一緒に生活……。私、この人と結婚するのよね)

彼の口から出てきた言葉が、明花に改めて結婚を意識させる。そのための顔合わせでここへ来たはずなのに、どうも現実味がなかった。


「それに、今ので肩の力が抜けました」
「肩の力が?」
「ええ、これでも緊張していたので」


貴俊はおどけたように肩を上げ下げして微笑むが、きっと明花を気遣ったのだろう。緊張していたようには全然見えず、むしろ堂々としている。


「趣味か……今は仕事がそれにあたるかな。……と言ったら、なんの面白みもない男と思われてしまいますね」
「いえ、お仕事がお忙しいでしょうから」


趣味に割く時間がなくても無理はない。
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