政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ありがとうございます。では改めてご挨拶させてください」
明花は両手を膝の上に揃え、背筋を伸ばした。
「このたびは父の会社を救ってくださりありがとうございます。至らない点がたくさんあるかと思いますが、よき妻になれるよう努めます。なにか気になる点やご要望がありましたら、なんでもおっしゃってください。全面的に貴俊さんに従います」
貴俊がどういう理由で明花との結婚を望んだのかわからないが、明花は彼の妻という役割を果たすのみ。
(大丈夫、どんな結婚生活が待ち受けようと、雪平の家にいたときに比べたらなんでもないわ)
召使いのごとく扱われていた頃を思えば、なんだって我慢できる。
「それじゃ、まずは……」
早速なにかあるようだ。貴俊はテーブルの上でゆったりと手を組んだ。