政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
まさか彼からプロポーズされるとは思ってもみなかった。明花はそのつもりでここへ来たのであり、結婚は既定路線であったから。改めてそんな言葉を聞くとは想定外だ。
明花を真っすぐ見つめる貴俊の眼差しに思わずたじろぐ。
「まだ迷いが?」
貴俊はすぐに答えない明花を訝しげに見る。
「すみません、そんなお言葉をいただけると思っていなかったので驚いてしまって。迷いはありません」
この結婚で父の会社を救ってもらえれば、明花はそれで十分だ。
「じゃ、これも受け取ってくれるね?」
貴俊が胸ポケットから取り出した小箱を見て、明花はさらに驚く。中から指輪が出てきたのだ。
緩やかなカーブを描いたリングのセンターには大ぶりのダイヤモンドが光り輝き、サイドにも小さなダイヤモンドがいくつかあしらわれている。とても贅沢なデザインだ。
(顔合わせ当日に婚約指輪まで用意されているなんて……)