政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

あまりの急展開に口を半開きにして固まる。指輪の美しさに見惚れたせいもある。


「気に入らないデザインなら作りなおそう」
「い、いえっ、違うんです」


貴俊がケースの蓋を閉めようとしたため慌てて引き留める。


「指輪まで用意していただいているなんて思わなかったので。とっても素敵です」


普段ジュエリーを身に着けないが、相当値が張るものなのは一見してわかる。


「それならよかった」


貴俊は中から指輪を取り出し、明花のほうに手を差し出してきた。


「左手を貸して」


言われるままにおずおずと出す。
事前に知っていたら、せめてネイルを綺麗にしたのにと悔やむ。とはいえ、いつもなんの飾り気もない手だし、マニキュアを持ってもいない。
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