政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ううん……。それで話って?」
「ここじゃなく中で話そう」
少し強引に明花を促し、秋人が玄関のドアを閉める。
(大事な話って、いったいなんだろう。それもこの家に呼び出してまでなんて……)
不安を覚えながらも出されたスリッパに履き替え、明花は秋人の背中を追った。
通されたリビングに義母と義姉はおらず、密かにほっとしながら足を踏み入れる。就職を機に明花がこの家を出たあとにリフォームしたのか、内装が様変わりしていた。
ダークブラウン色だった床はナチュラルカラーになり、白いモールディングの腰壁が高級感を醸し出す。当時ゴテゴテしていたリビングのシャンデリアは、シンプルなペンダントライトになっていた。
この家は明花にとって実家という認識はもともと薄いが、ガラッと印象が変わったため、完全に他人の家と化す。明花はお客さん気分だ。
秋人はひとり掛けのソファに、明花はその向かいの三人掛けのソファの隅に腰を下ろした。
秋人がどことなくソワソワしているせいで、明花まで落ち着かない。すぐに話を切り出さないところを見ると、義母と義姉を待っているのだろう。
(四人で顔を突き合わすなんて、本当にどんな話なのかな……)