政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

貴俊が明花の手を取り、薬指に指輪を滑らせていく。触れ合った手が気恥ずかしくて、勝手に頬が熱を持つ。


「……ぴったり」


思わずぽつりと呟いた。明花の薬指に収まった指輪は、あつらえたようにフィットしたのだ。
狐につままれたみたいに不思議で、貴俊を見る。


「サイズもそれで大丈夫そうだな」
「はい。でもどうして……」


明花の指輪のサイズがわかったのか。疑問渦巻く瞳で問いかけたが――。


「合ったのならそれでいい。細かいことは気にしないでくれ」


貴俊はそこで指輪の話題を切り上げた。
きっとたまたま合っただけであって、合わなければリサイズすればいいと考えていたのだろう。出会ったばかりのため深く詮索するのも躊躇われ、明花もそれ以上の追及をやめた。
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