政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

明花と貴俊はレストランを出て秋人たちと合流した。

エントランス前には桜羽家専属の車が待機しており、そこから降り立った運転手が明花たちにも恭しく頭を下げる。パールホワイトの車体が眩しい外国産の高級車だ。


「今日はありがとうございました。明花さん、あとで連絡します」


後部座席に乗り込んだ貴俊が、パワーウィンドウを下げて秋人と明花それぞれに挨拶をする。その奥で八重は頭を下げた。

彼らを乗せた車がホテルの敷地内を出るところまで見送ると、明花は肩を上下させて大きく息を吐き出した。
無意識に体に力が入っていたようだ。


「疲れたか?」
「うん、少しだけ。でも大丈夫。お父さんは?」
「父さんも平気だ」


顔合わせも無事に済み、ひと息といったところか、秋人は安堵したように顔を綻ばせた。

ラウンジでは八重と仕事談議に花を咲かせたらしい。彼女はアメリカで人材派遣業を営んでいるという。
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