政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「明花ちゃん、いい人ができたの?」
「いい人と言いますか……」
「結婚するんですって」
のらりくらりと答える明花に痺れを切らし、万智が先走って答える。
「結婚!? 恋人はいないって言ってなかった?」
「ですよね、私も今そう突っ込んでいたところなんですよ」
隆子と万智、ふたりの視線が明花に向けられた。興味津々、聞きたくてうずうずしている感じだ。
「じつは土曜日にお見合いをして、この指輪はそのときにお相手からいただいたんです」
「お見合いの日に指輪? それってフライングしてません? 明花さんの返事も待たずに用意していたってことですか?」
たしかに普通に聞けば不審に思うだろう。
「結婚は最初から決まっていたから、顔合わせ的な場だったの」
明花はそれまでの経緯をふたりに簡潔に説明した。説得力を持たせるために、父親の会社の経営が芳しくないのも包み隠さず打ち明ける。