政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「どうぞ」
玄関ドアを開け、貴俊が明花を中へ促す。
中へ一歩踏み込んだ瞬間、広い玄関ホールが姿を現した。
フロアの大理石や仕切りに使われたガラスなど、無機質ながらも光沢のある素材から高級感が溢れ出す。エントランスロビーを目にしたときのように声も出ず、情けなく口を半開きにしたまま固まった。
「明花?」
「あっ、ごめんなさい。あまりにも立派過ぎて……。超高級ホテルみたいです。……と言っても、そんなところに泊まったことはないんですけど」
「明花もここで一緒に暮らすんだよ」
「そう、ですよね。なんだか信じられないです」
非日常の空間からは生活感の欠片も感じられない。そしてそれは玄関フロアから続くリビングダイニングに案内されても同じだった。
岩肌のような造詣をした壁や、そこから続くようにテーブルやキッチンカウンターまでもが大理石で造られ、目を惹きつけられずにはいられない。
バスルームや寝室など、ひと通り案内されたが、どこも言葉では言い表せられないほど立派で、明花はため息の連続だった。