政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

極めつけは最後に案内された裏庭だ。ウッドデッキとテラスが設置され、青々とした芝生の上では大人数を呼んでバーベキューパーティーもできそうなほど。その上プールまである。
泳ぐ季節にはまだ早いが、ライトアップされた水面が青く光っていた。

座り心地のよさそうなテーブルセットでは、優雅なティータイムを過ごせそうだ。

外からの視線は当然ながらシャットアウトされ、裏庭に面した上階の壁には窓もなく、完全なるプライベート空間が造られていた。


「このお庭は、ほかの入居者の方も使うんですよね?」
「いや、俺たちだけの庭だよ。一階には俺たちしか住んでないから。出入り口はここにしかない」


明花はまだ住んでいないが、貴俊が〝俺たち〟を強調する。その言葉に密かにドキッとしつつ、一階にはほかに誰も住んでいないと知り驚く。

(そういえば庭に面しているのは全部、案内された部屋だものね)

マシンが置かれたトレーニングルームやシアタールーム、そのほかにゲストルームなどたくさんの部屋があった。

(マンションの一階を全部ひとり占めなんて……)
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