政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
こぢんまりとした建物でもないのに。
明花の想像では及ばないことばかりで驚きの連続だ。
「いろいろとすごいですね」
「子どもができたら、ここで存分に遊ばせられる。ブランコやジャングルジムを置いてもいい」
「子ども……」
いずれそんな未来が訪れるのはわかっていても照れずにはいられない。出会って数日のうえ、手も繋いでいない相手から言われたせいもあるだろう。
「欲しくない?」
「はい?」
「子ども」
「あ、いえ、その……欲しいです」
誘っていると思われたらどうしようかと恥ずかしくて、目を逸らして答える。
自分が辛い目に遭ってきたからこそ、結婚相手との子どもは欲しかった。誰にも恨まれず、後ろ指を差されない子どもが。
貴俊はふっと笑い、明花の頬を指先で軽く撫でた。
反射的に肩をピクンと震わせた瞬間、視界が遮られる。それと同時に唇にやわらかな感触が押し当てられた。