政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
キスされたのだと気づいたのは、彼の唇が離れてから。貴俊は、目を見開いて硬直する明花の髪を耳にかけて微笑んだ。
「よかった。俺も子どもが欲しい」
「は、はい……」
貴俊はただ、子どもが欲しいと言っただけ。それなのに、明花が欲しいと言われているように感じる身勝手な心。むやみに胸が高鳴る。
初めてのキスなのに目も閉じられず、間抜けな顔を晒した後悔にも襲われ、にっちもさっちもいかない。
鼓動をなんとか宥めすかせて平静を装うが、その後の彼との会話はほとんどがうわの空だった。