政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
否定してはみるものの、まさに図星だった。
相手が貴俊ひとりならまだしも、彼のような人たちが大勢いる場はどうしても躊躇いがある。
(でも、貴俊さんと結婚する以上、これからはそういった人たちとの付き合いがあるのも覚悟しなきゃならないよね)
尻込みしている場合ではないし、行かない選択肢など最初からない。
「大丈夫です。行きます。どういった服を着ていったらいいですか?」
今はオフィスカジュアルで通勤しているため、きれいめのワンピースやドレスは持っていない。あるとすれば就職活動中に着ていたリクルートスーツくらいだ。
でもきっとそれではダメだろう。
『そんなに気負う必要はないけど、心配なら一緒に見にいこうか』
「ほんとですか? よかった」
つい声を弾ませ安堵する。貴俊が見立ててくれるのなら安心だ。
明花の次の休みである水曜日の午後に約束を取りつけ、貴俊との通話を切った。