政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「そっか、明花さん、明日はデートだからウキウキしてるんだ」
お客さんが途切れた火曜日のお昼目前、隣に座る万智が明花をニコニコ顔で見る。
明日の休みの予定を聞かれ、明花は正直に答えただけだった。
「デートなんて改まったものじゃないの。洋服を一緒に見に行くだけだから」
「それをデートって言うんですよ」
万智が人差し指を立て、目に力を込めて力説する。
「そ、そうなのかな」
必要に迫られて約束を交わしただけであり、貴俊からそういうニュアンスも感じなかったため、彼女の指摘にドキッとした。
「約束して会うんだから立派なデートです」
「そう、ね。……あ、だけどウキウキは――」
「してましたよ? お客さんにもいつも以上の笑顔で接していましたし、どことなく声まで弾んでました」
すかさず肯定され、取り付く島もない。