政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「自覚がないみたいですねー」
「万智ちゃんってば、からかわないで」


彼女の肩を手で軽く払うが、言われてみればそうだったかもしれない。
お客さんのわがままな注文にも、いつも以上に気持ちよく対応できた気がする。それだけでなく要望以上の物件を探して、お客さんにもとても喜ばれた。

(デートなのかな……。でも貴俊さんはそんなつもりはないと思うんだけどな。必要に迫られて一緒に行くだけだもの)

心の中で必死に否定するものの、急に明日を意識してしまってかなわない。


「明花さん、照れちゃってかわいい」
「もう、ほんとにやめて」


言われれば言われるほどに耳が熱くなる。
それもこれも明花が恋愛に不慣れなせいであり、そんな自分がいきなり結婚というのだから人生とはわからないものだ。

その日は事あるごとに万智から明日の話を振られ、ときには隆子まで巻き込んでからかわれ通しだった。
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