政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

秋人に促され、ふたりは不満そうに顔を見合わせながら腰を下ろす。照美は秋人の隣のひとり掛け用ソファに、佳乃は明花が座る三人掛けソファの端にそれぞれ座った。

なんともいえない重苦しい空気が立ち込める。照美と佳乃の冷ややかな視線を感じるから、居心地は余計に悪い。


「それで話って?」


佳乃に急かされ、秋人が深刻な様子で重い口を開く。


「じつは雪平ハウジングの業績が芳しくないんだ」


雪平ハウジングは、秋人が社長を務める工務店である。その名の通り住宅建築を生業とする、従業員百五十名ほどの中規模の企業だ。
大手のハウスメーカーはもちろん根強い人気があるが、地元に根差し、地域の特性や気候に合った工法を売りとした雪平ハウジングは地域一帯では推されている。

その業績が芳しくないとはいったいどうしたことか。

肩を上下させて息を吐き出しながら、秋人は唇を噛みしめた。
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