俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
十四章
問題の文化祭の翌日。
完全に気が緩んでいたと言っても良い。
朝、校門の前で響子ちゃんとバッタリ会ったので一緒に教室まで行く事になった。
そう、回数が減ったとは言え嫌がらせがまだ続いていた事を私はすっかり忘れていたのだ。
「な、なによこれ……」
ゴミが大量に入った下駄箱を見て、響子ちゃんは私の隣で絶句しているようだった。
そんなことよりもだ。
(しまった!ビニール袋を持ってきてない!)
見慣れた景色ではあるのでもう驚きもないけど、私としたことがゴミを入れる用のビニール袋を持ってくるのを忘れたのだ。
ビニール袋が無いとゴミを運ぶのが大変なんだよな〜なんて考えていると、響子ちゃんは自分の上履きをなぜか私に渡してきた。
「?響子ちゃんどうしたの?」
「これ履いて。こんな状態にされてちゃ履けないでしょ」
「えぇ!?い、いや、良いよそんな!そしたら響子ちゃんの上履きが無くなっちゃうじゃん!」
「ならもっと怒ってよ!柚は自分がなにされたか分かってるの…?」
響子ちゃんは私よりもずっと悲しそうだった。
私には慣れてしまった光景でも、響子ちゃんはこれを初めて見たんだ。
私が被害者のはずなのに、響子ちゃんの悲痛そうな顔を見ると胸がチクチクと傷んで仕方ない。
「ご、ごめん……悲しくない訳じゃないんだけど…」
「……分かったなら、今日という今日は絶対に草野を問い詰めるから。今から三組に行って草野に会いに行きましょ」
「ちょ……響子ちゃん!?」
そ、それは流石にいきなりすぎるよ!
全くもって心の準備が出来てない私とは違い、響子ちゃんは覚悟が決まった目をしている。
私の腕をグイグイと引っ張って行こうとする響子ちゃんにバランスを崩さないようにしながら、ゴミだらけの上履きを履いた。