俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい


『柚見て!花火!』


『うわぁ……!すっごい綺麗……た〜まや〜〜!』


『ふふ、知ってる?玉屋は昔の花火屋さんの名前なんだよ』


『えっ、そうなの!?花火の掛け声だと思ってた……』


『昔ね、花火屋に玉屋と鍵屋があって、凄い花火をあげた方を応援する掛け声なんだって。今は玉屋は無くなっちゃったから、"かぎや"って叫ぶ人もいるらしいよ』


『響子ちゃんは博識だね……!よーーし!かーーぎやーーー!!!』


『ふふふっ』




……


土曜日の朝。

去年の夏祭りに行った夢を見て目覚めた。

高校に入って、響子ちゃんと仲良くなってから初めて遊んだ日。


私が得意気に"花火がよく見える場所知ってるんだ!"って言って響子ちゃんを連れていった時のことを今でも覚えてる。

花火が終わったあとは、来年も行こうねなんて話もしてたなぁ……


あ、ヤバい……涙出てきた……


響子ちゃんは去年のこと忘れてるのかなぁ…

本当に用事があったのかもしれないけど、やっぱり寂しいよ。



「………あとで、ちょっとだけ見に行こうかな…」



一人で夏祭りに行くほど惨めなことはないけど、行かないで家にいるのも勿体ない気がした。

元宮君を断った手前、ちょっと行きづらいけど、こうやってウジウジしてても仕方ない。

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