俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
「……あ、藍沢さん?」
「あ…………な、夏秋さん……」
藍沢 華さんは隣のクラスの……つまり、元宮君と同じクラスの女の子だ。
私と去年同じクラスで、最初の方に少し話してた大人しめの子だ。
そんな藍沢さんとは対照的に、もう一人の子はサバサバしてそうな子だった。
「元宮じゃん、アンタも夏祭り来てたんだ」
「……悪いか?」
「別に悪いなんて言ってないじゃん、ねー?華ー」
「う、うん……えへへ……」
元宮君に二人が話しかけてるから、仕方ないとは言え私は微妙に孤立してしまった。
藍沢さん、こんなに話す人だったんだ……って思うぐらい元宮君に一生懸命話しかけてるみたいだけど、当の本人は要領を得ない会話にちょっとイライラしてるようだった。
「も、元宮君、それでね……い、一緒にお祭りまわりたいなぁって……」
「……ん?わ、私は……?」
「夏秋さん……は……ね?」
藍沢さんが気まずそうに笑った。
いやいやちょっと待った!
藍沢さんは多分元宮君の事が好きなんだと思う。
そこまでは分かるとしても、私と元宮君が先に一緒に遊んでたのに元宮君だけ誘うのか?そんなことある?
全く知らない人ならともかく、普通に去年話してた仲だからちょっとショックだ。
「お前らとなんで俺が回んなきゃいけないの?」
「元宮って意外と鈍いね、華ってアンタのこと好きなんだよ!」
「ちょ、百合ちゃん……!」
もう片方の子は百合ちゃんって言うらしい。
予定は立ててなかったし、なんなら一回誘いを断った身としては引き止めることなんて出来ないけど…
「へぇ、だから?」
「……え?」
「俺のこと好きだからなに?」
面倒くさそうに二人に言い放つと、元宮君は私の腕を引っ張った。
「柚月、移動するぞ」
「えっ?で、でも……」
「俺は柚月以外どうでもいいんだよ」
当たり前のようにサラッと言ってのけると、元宮君は私の腕を引き足早にその場から離れた。