俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
あの後、心臓がバクバクと音を立てながらも、なんとかクラスに着いた。

それからはあまり記憶がない。

あの異様な光景が、会話をしている最中もフラッシュバックしてきて頭がふわふわとしていた。



「……ず、柚……!」


「んえ?」


「私の話、聞いてた?」



響子ちゃんが困った顔を向ける。

そうだった、今は響子ちゃんとお喋りをしてたんだ。



「ごめんごめん、ちょっと寝不足でボーッとしてた……どうしたの? 」


「……私、夏祭りの誘い断っちゃったでしょ?だからね……その……」



珍しく響子ちゃんが言い淀んでいる。

バツが悪そうな、申し訳なさそうな顔でこっちを見る響子ちゃんに、なんでかホッとした。

良かった。響子ちゃん、私のことちゃんと気にしてくれてたんだ。




「ううん、大丈夫だよ響子ちゃん。また別の日に遊べば良いんだからさ!」


「うん、ごめんね……柚も花火見たかったよね…」


「あ、その事なんだけど……実は土曜日一人で見に行っちゃったんだよねー、花火見たいなーと思ってさ」



「…………一人で花火見たの?」





内心ドキリとする。

正確に言うと、一人で見に行ったけど、途中で元宮君と合流したって言うのが正しい。


でも元宮君の話をすると、響子ちゃんはちょっと不機嫌になるからあんまり話題に出したくないんだけど……



『……私にはなにも言ってくれなかったんだね』



あの時の響子ちゃんの顔は忘れられない。

それに、響子ちゃんには、またそういう思いをして欲しくない。

だから今回は正直に話そう。



「あー……その……途中からね、たまたま元宮君とバッタリ会って!それで流れで一緒に見ることに……みたいな……?」



「…………そう、なの……」



やっぱり、響子ちゃんは元宮君の名前を聞いた瞬間顔を歪ませた。

響子ちゃん、遊んだ時は元宮君とそんなに仲悪そうじゃなかったのにどうしたんだろう。



< 59 / 121 >

この作品をシェア

pagetop