俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
「単刀直入に言うぜ。夏秋がこの間から嫌がらせを受けてんだよ」
壁に寄りかかりながら話す望月君に、響子ちゃんは驚いた顔で見上げた。
「嫌がらせって……」
「靴に生ゴミ入れられたりとか、びしょびしょにされたりとかそういうくだらない嫌がらせを受けてるんだとよ。響子にも助けて欲しいんだってさ」
「………柚は大事なこと、私には言わないよね」
鋭く、失望したように言う響子ちゃんにサーッと青ざめる。
確かにそうだ。私は、いつも響子ちゃんにしっかり話せてないかもしれない。
「おい、お前がいつまでも拗ねてんのが悪いんだろ?夏秋のせいにばっかしてんじゃねえよ」
響子ちゃんの態度が気に入らなかったのか、望月君は怪訝そうな顔で吐き捨てた。
「アンタになにが分かるの?第一、そんなくだらない事をされるまで恨まれる柚月も悪いでしょ」
「……え、?」
響子ちゃんの言った言葉がよく理解できなかった。
響子ちゃんは、私が悪いって言ってるの?
「で、でも、紙が入ってあって"元宮君に近付くな"って書いてたから…わ、私が直接なにかした訳じゃ……」
「柚は元宮のことどうしたいの?興味無いならちゃんと振れば良いじゃない、曖昧に流して良いように使ってるとしか思えないんだけど」
心臓がバクバクと音を立てる。
だって、響子ちゃんのその言い方って、嫌いな人に対する言い方と全く一緒だから。
「お前、なに言ってんの?仮にそうだとして、なんでここまでの仕打ち受けなきゃいけねえんだよ」
「私がやった訳じゃないんだから、知るわけないじゃん。でも元宮を都合よく使って、自分が一方的に好かれてる状況が気持ち良くなってるクズなら自業自得だと思うけど」
「響子!!」
望月君の怒鳴る声が聞こえてきた。
けど、私の頭に残るのは響子ちゃんの言葉だけだった。
元宮君に好かれるのは気分が良かった。
他の女の子にはなびかないで、私にだけ甘えてくる元宮君に内心楽しかったのは嘘じゃなかった。
本当に嫌なら断れば良かったのに、断らないで私はいつも困ってるのを装ってたんだ。
「柚月のそういう曖昧な態度で拒絶しない、八方美人で悲劇のヒロインぶる所、大ッ嫌いだから」
そう言い残して、響子ちゃんは足早にこの場を立ち去ってしまった。