俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
「……なにも知らねぇくせに」
「……は?なんだよ」
「夏秋がいじめられてんのはてめぇのせいだろうが!!」
頭の中でプツン、と何かの糸が切れた気がした。
「お前さえ来なければ夏秋だって今頃響子と普通に生活出来てたんだ!お前が来てから響子はおかしくなったし、夏秋だって嫌がらせを受け始めた!全部お前のせいじゃねぇか!!」
「……柚月が、いじめ……?」
「あぁそうだよ。お前が夏秋にアホみたいに惚気けてる間に、お前の事好きな女から逆恨みされてたんだ。毎日下駄箱にゴミ入れられて、靴だって水浸しになってよ…お前は夏秋が苦しんでる間になにしてたんだよ?悲しませねぇなら、なんでこんな事すら知らないんだ?」
自分の感情が抑えられない。
俺は出来る限りのことはやってた。
可哀想な夏秋を俺が守ってやらないとって、ずっと考えて行動してた。
いじめを辞めさせて、響子とも仲直りさせて、それでまたいつもの三人の雰囲気に戻りたかったのに。
「"柚月が自分のこと避け始めた"って?当たり前だろ、全部てめぇのせいなんだから。会ったこともない奴に付き纏われるわ、お前の気持ち悪い囲いからいじめを受けるわで、お前と関わってて良い事一個も無いじゃんか」
「……俺は、ただ柚月を……」
「お前さえ死ねば夏秋は悲しまなくて済むんだよ!!」
あ。
言っちゃいけないことを言った気がする。
元宮は俺の言葉に眉間に皺を寄せて、ぐっと唇を噛み締めた。
心底傷付いたって顔だ。
俺の言葉にというより、俺の言葉を通して夏秋の事を考えているからだろう。
みるみると眉を下げて悲しそうに顔を歪める元宮に、なんだかこっちも悲しくなってきた。
でも、俺だって完璧じゃないんだ。
俺なりに頑張ってるのに、ちょっと空回りしてそれで責められるなんておかしいだろ?
そう頭の中で言い訳を重ねても、心のモヤモヤが晴れることはない。
(響子も、俺が見えない所でこんな顔してたのかなぁ…)
俺は間違ったことは言ってない。
だから、元宮にも響子にも、俺から言うことはなにもないんだ。
元宮を見ていられなくなって、俺はあの時の響子と同じように足早にここを後にした。