嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
11
今朝、オルフレット様は王城で書類の目通しをしていると、カウサ様は伝えた。執務は陛下と時期国王になる王太子の仕事のはず。
そしてカウサ様は
『オルフレット殿下を癒してあげてください』
とも、おっしゃった。
もしかして……オルフレット様はお一人で何かを抱えてらっしゃる。しかし、ロレッテが聞いてもオルフレット様は「何もないよ」と、彼の心の声はわからないし、はぐらかすに決まっている。
どうすれば彼の話を聞けるのか、と考えていた。そこに足音が近付き、お父様が庭に現れた。
「おぉオルフレット殿下、いらしていたのですか」
「お邪魔しています、コローネル公爵」
〈公爵は長い間、父上を支えてきた。宰相の彼に話せば助けてもらえるか? いや、情けないと言われ、ロレッテと婚約破棄されるやもしれない〉
(助けてほしい? 婚約破棄⁉︎)
だけど、オルフレット様はいつもの様に微笑んでいるだけで。表の表情からではオルフレット様の、心の内を読み取ることができない。
――もどかしい……オルフレット様のお力になりたい。
(王家で何か起きていると、お父様にお伝えしたい。でも、私がオルフレット様の声が聞こえていると知られたら……おかしいか、気持ち悪がられるわ)
ロレッテはもどかしい気持ちのまま、2人の話を聞いていた。
「おぉ、そうだった」とお父様は手を叩き、頭を下げた。
「オルフレット殿下、あの時は娘がお世話になりました。あんなに必死な、殿下の姿は初めて見ました」
「いや、お恥ずかしい……元はといえば自分のせいで、ロレッテ嬢が倒れてしまったですから……」
「うむ、そうであったな」
倒れたときの話が出て、顔はにこやかに笑ってはいるが、オルフレット様の表情が一瞬、曇ったように見えた。
〈正直なところ、この話はキツいな。だが、あの時ロレッテが倒れたのは僕のせいだ。やはり婚約はなかった事にと、今ここでコロネール公爵にそう言われても仕方あるまい……〉
(庭園で2人を見たとき……すごくショックだった)
あの時のまま、オルフレット様の声を聞けないでいたら「近寄らないで!」と、泣き叫んでロレッテはオルフレット様を嫌っていた。
いまはこの心の声のおかげで、ロレッテは本当のことを知れて――いまもこうしてオルフレット様の側にいる。
しかし、自分の心の内側がロレッテに知られているなんて、嫌なことだろう。
(だけど、ごめんなさい。私はこの声が聞こえて、よかったと思っている)
お父様はガッチリ、オルフレット様の手を持ち。
「いや、目を覚ましたあと娘は気落ちしておりましたが。最近ではオルフレット殿下の話ばかり。やはりオルフレット殿下を、心よりお慕いしているからでしょうな」
「お、お父様!」
〈なんと、ロレッテが僕の話をしてくれているのか……嬉しい〉
「それにオルフレット殿下も、娘を心配する余り泣いてらした。時間が許す限り眠る娘から離れず、ずっと手を握ってくださった……まあ、色々ありましたが。娘はなんと、いいお方に巡り会えたと家内と感謝をしております」
「……こ、婚約者として、当たり前のことをしたまでです」
〈……あの時のことは自分の甘さが招いたこと。情け無くて、気絶したロレッテを抱きしめて、馬車の中で涙が止まらなかった……〉
(オルフレット様……)
❀
ずっと、お父様は立ち去らず椅子に座りオルフレット様と、楽しげに話をしている。オルフレット様も少々困りながらも、にこやかにお父様の話に応じているが。
――今は、私とのお茶会の時間。
「デュックお父様!」
ロレッテは2人の話を中断させ、立ち上がって屋敷を指差した。
「夕飯のとき、オルフレット様とご一緒するのです。積もる話は"その時"でお願いします。私とオルフレット様のお茶の邪魔しないでください!」
「「⁉︎」」
いつもは声を荒げることなく、お淑やかな私を知る二人。この大胆なロレッテの発言にお父様と、オルフレット様は驚きの表情を見せた。
そしてカウサ様は
『オルフレット殿下を癒してあげてください』
とも、おっしゃった。
もしかして……オルフレット様はお一人で何かを抱えてらっしゃる。しかし、ロレッテが聞いてもオルフレット様は「何もないよ」と、彼の心の声はわからないし、はぐらかすに決まっている。
どうすれば彼の話を聞けるのか、と考えていた。そこに足音が近付き、お父様が庭に現れた。
「おぉオルフレット殿下、いらしていたのですか」
「お邪魔しています、コローネル公爵」
〈公爵は長い間、父上を支えてきた。宰相の彼に話せば助けてもらえるか? いや、情けないと言われ、ロレッテと婚約破棄されるやもしれない〉
(助けてほしい? 婚約破棄⁉︎)
だけど、オルフレット様はいつもの様に微笑んでいるだけで。表の表情からではオルフレット様の、心の内を読み取ることができない。
――もどかしい……オルフレット様のお力になりたい。
(王家で何か起きていると、お父様にお伝えしたい。でも、私がオルフレット様の声が聞こえていると知られたら……おかしいか、気持ち悪がられるわ)
ロレッテはもどかしい気持ちのまま、2人の話を聞いていた。
「おぉ、そうだった」とお父様は手を叩き、頭を下げた。
「オルフレット殿下、あの時は娘がお世話になりました。あんなに必死な、殿下の姿は初めて見ました」
「いや、お恥ずかしい……元はといえば自分のせいで、ロレッテ嬢が倒れてしまったですから……」
「うむ、そうであったな」
倒れたときの話が出て、顔はにこやかに笑ってはいるが、オルフレット様の表情が一瞬、曇ったように見えた。
〈正直なところ、この話はキツいな。だが、あの時ロレッテが倒れたのは僕のせいだ。やはり婚約はなかった事にと、今ここでコロネール公爵にそう言われても仕方あるまい……〉
(庭園で2人を見たとき……すごくショックだった)
あの時のまま、オルフレット様の声を聞けないでいたら「近寄らないで!」と、泣き叫んでロレッテはオルフレット様を嫌っていた。
いまはこの心の声のおかげで、ロレッテは本当のことを知れて――いまもこうしてオルフレット様の側にいる。
しかし、自分の心の内側がロレッテに知られているなんて、嫌なことだろう。
(だけど、ごめんなさい。私はこの声が聞こえて、よかったと思っている)
お父様はガッチリ、オルフレット様の手を持ち。
「いや、目を覚ましたあと娘は気落ちしておりましたが。最近ではオルフレット殿下の話ばかり。やはりオルフレット殿下を、心よりお慕いしているからでしょうな」
「お、お父様!」
〈なんと、ロレッテが僕の話をしてくれているのか……嬉しい〉
「それにオルフレット殿下も、娘を心配する余り泣いてらした。時間が許す限り眠る娘から離れず、ずっと手を握ってくださった……まあ、色々ありましたが。娘はなんと、いいお方に巡り会えたと家内と感謝をしております」
「……こ、婚約者として、当たり前のことをしたまでです」
〈……あの時のことは自分の甘さが招いたこと。情け無くて、気絶したロレッテを抱きしめて、馬車の中で涙が止まらなかった……〉
(オルフレット様……)
❀
ずっと、お父様は立ち去らず椅子に座りオルフレット様と、楽しげに話をしている。オルフレット様も少々困りながらも、にこやかにお父様の話に応じているが。
――今は、私とのお茶会の時間。
「デュックお父様!」
ロレッテは2人の話を中断させ、立ち上がって屋敷を指差した。
「夕飯のとき、オルフレット様とご一緒するのです。積もる話は"その時"でお願いします。私とオルフレット様のお茶の邪魔しないでください!」
「「⁉︎」」
いつもは声を荒げることなく、お淑やかな私を知る二人。この大胆なロレッテの発言にお父様と、オルフレット様は驚きの表情を見せた。