嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

17

 力を貸してください、と言ったロレッテに。

「ロレッテ、皇太子ルルーク殿下のことは知っているな」

 お父様のその言葉にロレッテは頷いた。いま国の皇太子は若くして亡くなった前国王の息子。オルフレット様のお父様、国王は当時5歳だった彼を第一王子として迎えた。それから2年後にオルフレット様がお生まれになる。

「ロレッテは……第一王子ルルークの婚約者候補であった」
 
「え、私がルルーク殿下の婚約者候補だったのですか? でも私とルルーク殿下は7つ違い。それにお父様、私が王城へ呼ばれたとき、皇太子にはすでに婚約者がおりました」

 ロレッテが婚約者候補に選ばれていたのなら、一度くらいはルルーク殿下にお会いしていたはず。だけど、ロレッテが王城で、はじめてお会いしたのはオルフレット様だった。

「そうだったな。まあ、ロレッテも一度、皇太子ルルーク殿下とのお茶会に呼ばれてはいたが。その日……事故があって、お茶会は中止になった。そして翌年、皇太子のお披露目の舞踏会で設けられた顔見せの席で婚約者が決まった。7歳年下のロレッテは舞踏会への参加は認められず、候補から外れて、同じ歳のオルフレット殿下の婚約者候補になったんだ」

 皇太子ルルーク殿下は前国王の面影を残す――今は公務がお忙しくらしく。オルフレット様の婚約者として選ばれたときの、お茶会の席でお会いした日以来、ルルーク殿下には会えていない。

 ロレッテが、皇太子ルルーク殿下の婚約者候補だった。
 そして事故で、中止になったお茶会。

 ――私の7歳、その時の記憶がすごく曖昧だ。私は2度王城へ来ているはずなのに、1度目の記憶がまったくなかった……まだ子供だったから忘れてしまったのかしら?


 
 ❀

 

「いま、この場で考える事はいくらでもできる。まずは自分の目で確かめなくてはな」

「ええ、そうね。話は確かめた後でしましょう。ロレッテはオルフレット様のご様子を見なさい……もし、お疲れの様子だったら癒してさしあげなさい」

「はい、お父様、お母様」

 宰相の仕事をなさっている、お父様の若い頃は王城の中を駆け回ってていた。しかし、いまは魔法省の錬金術師達が作った通信魔導具で陛下、皇太子と連絡のやり取りができてしまい、陛下にお会いする機会が減ったと話した。

「明日、王城で陛下に拝謁(はいえつ)出来ないか連絡を入れよう」
 
 お母様は貴族夫人がたくさん集まるお茶会、サロンに参加をして「それとなく王妃様のことを聞いてくるわ」と、部屋に戻り、届いた招待状に返事を返すとおっしゃった。

 陛下と王妃様のことはお父様とお母様にお任せして、ロレッテはオルフレット様を癒しますわ。
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