嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 彼の腕の中で、心の声と同時にオルフレット様の温かい気持ちに包まれてた。2人見つめ合うと、コツンとおでことおでこをくっ付けて笑った。

〈うれしい、嬉しくてニヤけてしまう〉
 
「ロレッテ嬢、ダンスはいつでも踊れる。今日はここで時間が許すまで過ごさないか?
 
「ええ、私もそう思っていました……オルフレット様」 

 止まってしまった食事を再開した。

「さあ、ロレッテ嬢にボクの苺をあげよう」

〈可愛らしく、食べる姿を私に見せてくれ!〉  
(オ、オルフレット様? そんな、大きな苺を選ばないでぇ)
 
「ん、オルフレッ……トしゃま、んんっ」
「ハハ、ロレッテ嬢、美味しいか?」

 コクンと頷くロレッテに「そうだろう」と、オルフレット様は珍しく大声をあげて笑った。それに釣られて私も「もう、酷いです」と怒り、声を上げて笑った。

 
 オルフレット様との楽しい会話と食事、テーブルの上の多くの料理全てがなくなった。

「ふぅ、もうお腹いっぱいですわ」
「ハハ、たくさん食べたね。ボクもお腹いっぱいだ」

 お皿を片付けて紅茶を入れた――明日は学園が休みなので、カウサ様が迎えに来るまで昔の想い出を話して。
 また笑って、オルフレット様との時間を過ごした。

 

 ❀

 

 屋敷に戻り夕食の時、食卓に付くお父様は渋い顔のままで、国王陛下と話を済ませてきたとおっしゃった。
 
 今朝、お父様――宰相の執務室に手紙が届き、呼ばれた場所へ向かうと、相当疲れ切った様子の国王陛下が元ワイン蔵で側近と待っていらした。

『よく来てくれた、宰相コローネル』

 もっと陛下に「近くに」と言われ近付くと、陛下は小声で話しはじめた。

『皇太子ルルークが視察から連れてきた、娘の家族がおかしい……ルルークになにか魔法を使っている様なんだが、いま調べ中だ』

『そうでしたか……側近、リザート公爵の者をお使いになったら良いのでは?』

『そう、したいのは山々なのだがな……』

 公爵リザード一家とは。表向きは王家専属の万能な側近。しかし裏では密偵、護衛など面倒ごとをいっぺんに引き受ける、王家に仕える裏組織。オルフレット様の側近、カウサ様はリザード公爵家の次男の方。

『皇太子も調べなくてはならないのだが――つい先日、隣国にいるリザード公爵家の者から届いた手紙に、おかしなことが書いてあった。隣国ローリゲスの長きに渡る戦争が終わりを迎えた。そして、ローリゲス国の国王が変わったのだが……何やら、王族の者ではないみたいなのだ』

『その話は本当なのですか? 代々王族の者が国王陛下になるはず。それに隣国ローリゲス国には、第一王子セルバン様がいるはずでは?』

『……うむ、そのセルバン王子はウチの学園に編入してきた。いま隣国で何が起きている気がしてならないが、首を突っ込むわけには行かぬからな』

「ロレッテ、皇太子も何かに巻き込まれているみたいだが……隣国ローリゲスでもおかしな事が起きている様だ」

 お父様の話に出たローリゲス国は、今日学園でお会いしたセルバン殿下の国。彼は国がゴタゴタ続きだったと仰っていた。 

 ご自身のご両親――国王陛下と王妃様の身に何か起きている中で、ご自分ではなく違う者を王座に据え置き、学園に編入するなんておかしい。

「お父様、そのこの事はオルフレット様はご存知なのですか?」
 
「セルバン殿下とオルフレット殿下は友人らしくてな、言えないでいるらしい。それと、陛下からシャンティ王妃様と、オルフレット殿下の書類の手伝いをして欲しいと頼まれた」

 お父様は陛下との話が終わり屋敷へ戻り、先にサロンから戻られた、ミンヤお母様を応接間に呼んだそうだ。

『ミンヤ、サロンでの話はどうであった?』

 サロンで話を伺ってきた、お母様は眉をひそめ。

『あなた大変よ。シャンティ王妃様はお身体を崩されて、領地で療養中らしわ』

『何? そうなのか……ミンヤ、領地に出向かってくれぬか? 私は国王陛下に王妃様と、オルフレット殿下の事を頼まれた』

『あなた、わかりました。準備ができしたい王妃様の所に向かいます』

『ミンヤ、気をつけるんだぞ』

 王妃様と顔見知りのお母様は、ご自身の専属メイドを連れて向かわれているらしい。お父様は屋敷のメイドを数人連れて出向こうと言った。

「お父様、私もオルフレット様の所に連れて行ってください!」

 明日は学園はお休みで時間もあるので。
 ロレッテも「オルフレット様をお助けしたい」とお父様に頼み込んだ。

「……ロレッテ、オルフレット殿下のそばを離れるでないぞ」

「お父様、わかりましたわ」

 特別に、専属のメイドのリラと一緒に、王城へ連れて行ってもらえることになった。
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