嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

27

 空き部屋でリラに手伝ってもらい、髪をカツラでおさげの茶色にして丸メガネをかけて、リラと同じメイド服を着込んだ。

 いつも身に付けるドレスよりも軽くて、メイド服は動きやすいし、白いエプロンは可愛い。

「リラ、どう? 誰も気付かないと思う?」
「はい、誰もロレッテお嬢様とは気付きません」

 ならオルフレット様も気付かないかもと、外で待ってくれているカウサ様と合流した。

「カウサ様、お待たせいたしました」
 
「いいえ、ロレッテ様? ……すみません、あまりにも変わっていたので……戸惑ってしまいました」

 え?

「ほんと?」

 これならオルフレット様も気付かないかも……フフ、バラす前に、少しイタズラしちゃいましょう。オルフレット様が驚かれるかもとウキウキ、オルフレット様の執務室へとカウサ様に案内してもらう。

「ロレッテ様、こちらがオルフレット様の執務室です。書類などが床に散らかっていますので、足元にお気を付けてください」

「わかりましたわ、リラも気をつけてね」
「はい、ロレッテお嬢様……あ、ロテ」

「そうね、リラ。ここではロテと呼んでね」

 メイドの時の名前を決めていた。


 コンコンコンとカウサ様が執務室の扉を叩き声をかけると、中からオルフレット様の「入って来ていいよ」と声が聞こえた。

「オルフレット様、失礼します。コロネール公爵のメイドが2人、こちらへお付きになられました」

 と、カウサ様が開けた木製の扉の中は、彼が言っていた通り書類が散乱している。その執務室の奥の机には書類が積み上げられ、オルフレット様がいた。

 彼は。

「コロネール公爵には感謝しかないな。ここに来てくれて助かる」

 いつもとは違い……少し跳ねた髪、シャツとスラックスのリラックスした服装。その姿で執務をするオルフレット様……初めて見る姿にドキドキしながら、ロレッテはリラの隣に立ち頭を下げた。

 オルフレット様は書類から顔を上げて、ロレッテ達に優しく微笑み。

「ありがとう、君たちが今日からここに来てくれるメイドだね」

「はい。私はロテ、隣はリラと申します。オルフレット殿下これからよろしくお願いします」

 もう一度、頭を下げた私達に「よろしく」と返し、オルフレット様は執務の続きを始めた。

〈ちょっと待て、ロテと言うメイド……どう見てもロレッテだよな。どうしてメイドに変装している? んん? そうか……ここへ来たことを、奴らにバレないようにしているのかな? それにしてもロレッテのメイド姿、可愛い〉

(ええ? 変装⁉︎ 可愛い? ひと目見ただけで、オルフレット様にバレてしまったの?)

 絶対、気付かれないと思っていたのに。一瞬で、オルフレット様にバレてしまいましたわ……どうして? と驚くロレッテに、呑気な歌とオルフレット様の声が聞こえた。

〈フフ、フフフン~。ロレッテは変装していても……そのふくよかな胸の膨らみ、くびれた腰は隠せていない。幼い頃から淑女教育を受けているから、ピンと背筋が伸びた立ち姿、品、スタイルが他の者とは違いすぎる……ハァ、いいなぁ、ロレッテのメイド服〉

(ふくよかな胸⁉︎ くびれた腰⁉︎ ……幼い頃から受けてきた淑女教育ですか。オルフレット様に褒めていただくなんて……頑張ってきた甲斐があります)

「ロテ、リラ、少し休憩するから。隣で紅茶をいれてきてくれるかい」
 
「はい、かしこまりました」
「……かしこまりました」

〈うむ。この後、ロレッテをメイド服のまま膝の上に乗せるか……それともお茶を一緒にするか? どちらがいいかな? それともカウサにケーキを持って来させるか? 疲れたと言って……添い寝もいいな〉

(オ、オルフレット様ぁ⁉︎)
 
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