嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

28

 ――オ、オ、オルフレット様と添い寝ェェェ!! 膝の上ならまだしも……添い寝は、まだ……無理です。

「わ、私、紅茶を淹れてきます」
「フフ、ロテ、リラよろしく」

〈ロレッテが淹れてくれる紅茶か……嬉しいな。出来たら隣のキッチンにボクも付いて行って、ロレッテが紅茶を淹れる姿を眺めたいな〉
 
(オルフレット様にそれをされたら……手元が狂って、ティーカップを割ってしまいそうです)

「カウサ、この書類をどう思う?」
 
「これは……オルフレット様が処理をせず。陛下に直接お見せしたほうがいいと思われます」
 
「そうか、わかった」

〈ウンウン、可愛い〉

 ロレッテとリラはテーブルに置きっぱなしの、ティーカップと皿を片付け、執務室の隣にある小さなキッチンに移った。その途端にこの前の馬車と同じで、オルフレット様の声は聞こえなくなる。

(やっぱり、オルフレット様とある程度離れてしまうと、彼の心の声は聞こえなくなるのね)

 
 執務室の隣にあるキッチンは真っ白な食器棚と、調理器具置き、小さな二口のコンロと流し台があった。

「リラ見て、これ古いけど魔導式のコンロだわ」
 
 この魔導式のコンロと流し台は、魔力を流せばコンロに火が付き、流し台では水が流れる。少量の魔力で使用できるため、魔力を持って生まれるこの国では人気の魔導具だ。

「はい、古い型のコンロですね。ロレッテお嬢様、こちらに調味料、調理器具もあります」
 
「これだけ揃っていたら、持ってきた材料で料理ができるわ」

 ――よかった、オルフレット様とカウサ様に温かい夕飯が出せる。


 魔導式のコンロにヤカンをかけお湯を沸かして、家から持ってきた茶葉で紅茶を淹れた。お茶菓子は……お昼が近いから、作ってきたサンドイッチとスコーン、バタークッキーにした。

「リラ、お昼が近いからサンドイッチとスコーン、バタークッキーを出しましょう」
 
「はい、かしこまりました」

 入れ立ての紅茶を持って、オルフレット様の執務室に戻り、テーブルに並べて。持ってきたバスケットを開き、サンドイッチ、スコーンと苺ジャム、バタークッキーを用意した。

「オルフレット様、紅茶が入りました」
「ロテ、リラありがとう。カウサも休もう」

 お2人は執務机を離れて、向かい合わせのソファーに座った。

「オルフレット殿下、カウサ様、私どもは隣で片付けをしております。何かご用がありましたらお呼びください」

 2人に礼をして、隣に下がろうとした。

「ま、待って……ロテ、ロテにはボクの隣に座って」

「え?」

〈ロレッテには側にいてほしい〉
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