嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

33

(この文字……やはり、ロレッテが浮気などするはずがない)

 メアリス嬢から、ロレッテがセルバンに送った手紙だと受け取ったが……彼女の筆跡とは全く違っていた。これは、ロレッテの筆跡を真似ようとした真っ赤な偽物の手紙だ。

(クク、こんな手紙でボクを騙そうというのか? ボクも舐められたものだ)

「ねぇ、わかったでしょう? ロレッテはセルバンと浮気してるの!」

 こんな馬鹿げた話を、ウキウキと話すメアリス嬢に嫌気がさす。

「悪いけど、わかったものにも……この手紙はロレッテ嬢が書いたものじゃないよ」

「嘘! そこにロレッテの名前が書いてあるじゃない?」

「名前? そうだね、書いてあるね……」

 君が何をしたいのかわからないが……父上に頼まれている以上、ここは追及せず彼女を泳がすしかない。

 ――しかし、この嘘の手紙の内容には少々腹が立つ。

 ロレッテがセルバンの事を好きなはずがない。オルフレットがそう言い切れるのは、ロレッテがヤツを覚えておらず、その理由が、オルフレットにとって嬉しいものであった。

 さっきのロレッテも可愛かった。

 あの仮眠室の扉は偶然に開いたのではなく。扉を開けたのは、今ここで姿を消している兄さん、ジルベスターだ。まさか枕を抱きしめたまま、ロレッテが現れるなんて……ここにメアリス嬢がいなかったら、ロレッテを抱きしめていたよ。

(この面倒な話を切り上げるには……)

「ふぅ、メアリス嬢この手紙は預かる。また何か気づいたら、教えてくれると嬉しい」

「ええ、わかったわ!」

「メアリス嬢、僕は執務に戻る。君の用事が終わったのなら、ここから出ていってくれるかい? カウサ、彼女を送って差し上げて」

「はい、かしこまりました」

 え? 待って。と言うメアリス嬢を執務室から追い出した。シルベスター兄さんも何か気になる事があるのか、2人の後について執務室を出て行ったみたいだ。

 うるさい彼女が帰り静かになった執務室。
 オルフレットは隣の部屋でお茶を淹れている、ロレッテを呼んだ。

「ロレッテ嬢、メアリス嬢は帰ったから出てきていいよ」

 そう隣の部屋に声をかけると、ロレッテが顔を真っ赤にして、枕を持ったまま1人で出てきた。やはり、ロレッテと一緒に来た、メイドのリラはわかっているな。

 さて、時間が許すまでロレッテと過ごそうか。
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