嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
37
その言葉を反芻したけど、ロレッテにはわからない言葉だった。だけど"ふと"何かを思い出そうとしたのは本当のこと。彼女の言動で何か思い出すかもしれない。
それは、ロレッテにとって悪いことじゃないといいのだけど。
「……ロレッテは悪役令嬢だからいいの。……ふぅん、そっかロレッテはいま薔薇園に出かけていて、いま屋敷にいないのか――ゲッ、またあいつに文句を言われじゃない。ねぇオルフレット! あいつ、セルバンとオルフレット様は友達でしょ? あたしを助けてよ!」
「助けない。ロレッテ嬢のことを悪役令嬢と呼びして、礼儀のない君をボクが助ける義理はない。君達の話はボクには関係のないことだ!」
「そんなぁ、あたしとオルフレットの仲じゃない、お願い助けてよ!」
興奮したのか、ますます甲高くなる彼女の声と。
彼女の言動と態度に苛々するオルフレット様につられて、ロレッテまでイライラしている。
ゴシゴシと乱暴に拭かれる窓と(メアリスさん、あなたは自分のことばかり! オルフレット様の表情を見て、声を聞いて、お疲れだと気付きませんの?)と、ロレッテは心の中で叫んだ。
「オルフレット! お願い」
――またメアリスさんは何を根拠に「オルフレット様は自分を嫌うはずがない」と思い、そんな態度を取れるのかしら?
「うるさい、いい加減にしないか! ……ところでメアリス嬢は知っているのか? この書類と、これも、あれも君達の領収書だ。毎日、毎日、兄上と、ただ遊んでいるだけだから暇だよね」
オルフレット様は執務机の書類をトントン、トントン集めはじめた。それを見て、メアリスさんはギョッとして慌てだす。
「ええ~メアリスは暇じゃないよ。毎日、オルフレットの隣に立ってもいいよう、髪と肌のお手入れに忙しいもん」
〈……君が僕の隣に立つなんて、無理だよ。……いまは兄上にかかる魅了魔法と、他にどう陥落させたのわからない。わかればすぐにでも追い出す〉
(王太子様が魅了魔法にかかって、陥落している⁉︎)
驚きで「えっ!」と声が出そうになったのを、ロレッテはなんとか口元を押さえて耐える。オルフレット様は大きなため息を吐き、メアリスさんにキツイ口調で聞いた。
「それと、いま君が着ているドレスと宝飾品の領収書はこれかな? 中々、高価な品を買ったね」
「えっ? 値段は知らない……あなたのお兄さんがあたしと姉に買ってくれたの。あたしはそれを貰っただけだから、悪くないし関係ないもーん」
〈いつも言い訳ばかりだな、もう呆れて何も言えない……〉
オルフレット様は今度は小さな、ため息をつくと"コンコンコン"と執務室の扉が叩かれた。
「オルフレット殿下、いま戻りました」
「カウサか、入れ」
オルフレット様の執務室に来たときから、城の外に出ていたカウサ様が手に何かを持って戻ってきた。――それを見たメアリスさんはポンと手を叩き。
「あーっオルフレット、忙しそうね。あ、あたし、急ぎの用事を思い出したから帰る、またね!」
「メアリス嬢、この書類は持っていかないのか?」
書類の束を渡そうとするが、メアリスさんは。
「い、いらない! いまから忙しくなるから無理!」
〈何が忙しいだ? どうせ、書類を持って行く気もないくせに、口だけは達者だな〉
オルフレット様の呆れた声が聞こえた後、メアリスさんは来たときと同じく、大きな音と共に執務室を出ていった。
それは、ロレッテにとって悪いことじゃないといいのだけど。
「……ロレッテは悪役令嬢だからいいの。……ふぅん、そっかロレッテはいま薔薇園に出かけていて、いま屋敷にいないのか――ゲッ、またあいつに文句を言われじゃない。ねぇオルフレット! あいつ、セルバンとオルフレット様は友達でしょ? あたしを助けてよ!」
「助けない。ロレッテ嬢のことを悪役令嬢と呼びして、礼儀のない君をボクが助ける義理はない。君達の話はボクには関係のないことだ!」
「そんなぁ、あたしとオルフレットの仲じゃない、お願い助けてよ!」
興奮したのか、ますます甲高くなる彼女の声と。
彼女の言動と態度に苛々するオルフレット様につられて、ロレッテまでイライラしている。
ゴシゴシと乱暴に拭かれる窓と(メアリスさん、あなたは自分のことばかり! オルフレット様の表情を見て、声を聞いて、お疲れだと気付きませんの?)と、ロレッテは心の中で叫んだ。
「オルフレット! お願い」
――またメアリスさんは何を根拠に「オルフレット様は自分を嫌うはずがない」と思い、そんな態度を取れるのかしら?
「うるさい、いい加減にしないか! ……ところでメアリス嬢は知っているのか? この書類と、これも、あれも君達の領収書だ。毎日、毎日、兄上と、ただ遊んでいるだけだから暇だよね」
オルフレット様は執務机の書類をトントン、トントン集めはじめた。それを見て、メアリスさんはギョッとして慌てだす。
「ええ~メアリスは暇じゃないよ。毎日、オルフレットの隣に立ってもいいよう、髪と肌のお手入れに忙しいもん」
〈……君が僕の隣に立つなんて、無理だよ。……いまは兄上にかかる魅了魔法と、他にどう陥落させたのわからない。わかればすぐにでも追い出す〉
(王太子様が魅了魔法にかかって、陥落している⁉︎)
驚きで「えっ!」と声が出そうになったのを、ロレッテはなんとか口元を押さえて耐える。オルフレット様は大きなため息を吐き、メアリスさんにキツイ口調で聞いた。
「それと、いま君が着ているドレスと宝飾品の領収書はこれかな? 中々、高価な品を買ったね」
「えっ? 値段は知らない……あなたのお兄さんがあたしと姉に買ってくれたの。あたしはそれを貰っただけだから、悪くないし関係ないもーん」
〈いつも言い訳ばかりだな、もう呆れて何も言えない……〉
オルフレット様は今度は小さな、ため息をつくと"コンコンコン"と執務室の扉が叩かれた。
「オルフレット殿下、いま戻りました」
「カウサか、入れ」
オルフレット様の執務室に来たときから、城の外に出ていたカウサ様が手に何かを持って戻ってきた。――それを見たメアリスさんはポンと手を叩き。
「あーっオルフレット、忙しそうね。あ、あたし、急ぎの用事を思い出したから帰る、またね!」
「メアリス嬢、この書類は持っていかないのか?」
書類の束を渡そうとするが、メアリスさんは。
「い、いらない! いまから忙しくなるから無理!」
〈何が忙しいだ? どうせ、書類を持って行く気もないくせに、口だけは達者だな〉
オルフレット様の呆れた声が聞こえた後、メアリスさんは来たときと同じく、大きな音と共に執務室を出ていった。