嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 オルフレット様の執務室からの帰り道、ロレッテは窓の外を眺めながら、今日の出来事を思い出していた。メアリスさんの目的はなんなのだろう? オルフレット様と恋仲になりたいのもあるけど――ほかに何かあるように感じた。

(……確か彼女の側に騎士団長の長子エステバン・シュナイザー様と、魔法省所長の長子ステルラ・レジモード様がいると聞いている)

 2人とも彼女にベッタリくっ付いていると、オルフレット様に聞いた。だが、エステバン様とステルラ様には愛する婚約者がいたはず。なのに、メアリスさんの側にいるのだらうか?
 
 彼女がロレッテを呼ぶときに言う悪役令嬢。
 オルフレット様に対して使う、イベント、フラグ等の言葉も気になっている。

 ――どうして、その言葉が気になるのかしら? いくら、考えても分からないわ。

 ふうっと、ため息を吐いた。

「ロレッテお嬢様、お疲れでしたらおやすみください」
「ありがとう、リラ。あなたも疲れていたら休んでね」

「ありがとうございます、お嬢様」

 ロレッテとリラは馬車に寄りかかり、目をつむった。

 

 ❀

 

 ロレッテが帰り静かになった、執務室でオルフレットは思う。王都に出来たサンドイッチ屋は、母上が開いた店だということが分かった。王城に母上も戻ればいいと思ったが、これは好都合かもしれない。

 学園の夏季休暇に視察へと出たとき、大切なロレッテを母上に守ってもらえる。ロレッテがいつ、オルフレットの知らないところで、セルバンに狙われるかもわからない。
 
 ――明日、母上に会って話さなくては。

 

「戻りました。オルフレット様にお伝えしたいことがあります」

 ロレッテとリラを馬車まで送り、戻ってきたカウサは報告があると、自分の父と兄から聞いた話をオルフレットにはなした。

 ――その内容に驚くしかない。

「なに、それは本当なのか?」

「はい、王太子の側近として付く兄から聞いたので、確かな情報です」

 王太子主催の舞踏会で、怪しげなお香が焚かれている。
 そのお香の原料はセルバンの国――ローリゲスで採れる貴重な薬草らしい。

 しかし、妙な話だ。

 前に父上から聞いた話では、隣国の王に手紙を出しても返信が返らないと言っていた。また、カウサの家の者が父上の命令を受け、ローリゲス国に偵察に行ったがまだ報告がないらしい。

 ――ローリゲス国で、なにが起きているのか?
 ――セルバンは何も聞いていないのか?

 分からないことばかりだが。奴らの尻尾を掴んだら、この手で握り潰し全てに蹴りをつける。

 兄上――あなたもだ。

 全てを終わらせて、平和な日々を取り戻したいものだ。
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