嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
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「妻に"城での出来事""陛下の愛は不滅だと"王妃に知らせ、別荘にいてもらおうとしたのが、かえって仇になった。まさか王妃が王都に店を開店させるとは……このことを、シルベウス陛下が知ったら腰を抜かしますね!」
お父様は焦り、ひたいの汗をハンカチで拭き、オルフレット様は頷いた。
「僕もそう思います……父上と母上はおしどり夫婦ですから」
〈母上は"父上ラブ"の上に、あの活発な性格では……城でのことを知り、父上のこと知りって無理だったのだろう〉
(よかれと思って知らせたのが、悪かったのね)
「ですがコローネル公爵、母上とメイドのエリーがロレッテ嬢と、コローネル夫人を守ってくれます」
〈エリーは騎士よりも強い、母上の護衛も務めているから安心だ〉
そうだった、そのサンドイッチ屋にはお母様もいる。センバン殿下が私ではなく、お母様に危害を加えたかもしれない。
「エリー殿がいるのですか、心強い。陛下のことは私めにお任せください。ロレッテ、オルフレット様の言う通り、明日から、オルフレット殿下が戻るまで、そのサンドイッチ屋に行きなさい。母さんにも伝えてくれ」
「わかりましたわ、お父様」
❀
話が終えて視察に向かうかと思ったが、オルフレット様はロレッテの手を握った。
「ロレッテ嬢と、しばらく会えなくなるな」
「仕方ありませんわ」
〈最近、ロレッテと一緒に過ごせていたから……寂しいと感じるな〉
(……私もですわ)
「オルフレット様の戻る日を待っております」
落ち込んだ様子の私達を気遣ってくださっのか、お父様が出発の時間が来るまでの間、二人きりにしてくれた。
「ロレッテ嬢、ここに座ってくれるかい?」
「はい、失礼します」
執務室と同じく、彼の膝の上に座った途端に抱きしめられた。
その腕は力強く。
〈ほんの少しだ。ほんのしばらくロレッテに会えないだけだ〉
(はい、ほんのしばらくです)
オルフレット様は心の中だけで語り、ロレッテをただ静かに抱きしめた。
「ロレッテ嬢はいつも可愛いな」
「オルフレット様だって、初めて見る執事姿は素敵ですわ」
「そうかな? それは嬉しい」
〈ロレッテに褒めてもらえるのは嬉しいが。本当は皇太子の兄上が視察に出向いたほうがいいが、あの様子では無理。だからといって第二王子のボクが視察に回れば「王太子はどうなさった?」と国民に不安を与える〉
(だから、あえて素性がバレない様に執事姿で回るのですね)
いつも、オルフレット様ばかり大変な目に遭ってばかり。せめて、気に入ってくださった茶葉と昨日用意したバタークッキー、スコーン、マドレーヌを包みましょう。
あと、上手く刺繍ができたハンカチも。
彼の側に寄りたくて身を寄せた。
なにか香りがしたのか、すんすんと香りを嗅ぐ仕草をしたオルフレット様。
〈甘く、良い香りだ。いつものロレッテから香る石鹸とは違う香り……香油も使ってなく、化粧もしていないとなると、これはロレッテ自身の香りか!〉
(まあ、私の香り⁉︎)
昨日、お風呂には入りましたわよね。
でも、オルフレット様にどんな香りがしているのでしょうか?
〈これは堪らない、僕を掻き立てる香りだ。時間が許すまで……嗅ぎたい〉
(ひゃっ、オルフレット様! 近い、近いですわ。待って、首はダメです……っ! 背中さわさわもダメです)
これ以上触られると、離れたくなくなくなるとロレッテは、オルフレット様の胸を押し見上げた。
「あー離れたくないな。ロレッテ嬢、すぐに終わらせて戻ってくるね」
「はい、お待ちしております」
彼が近付くのを感じてロレッテが目瞑ると「ちゅっ、ちゅっ」と、オルフレット様に口と頬に軽くキスされた。
「……オルフレット様のお戻りを待っております」
「あぁ、ロレッテ嬢は母上の所にちゃんといくんだよ。これは命令、絶対にね」
はい、とロレッテは頷いた。
〈おーっと、ロレッテに夢中で渡すのを忘れていた〉
オルフレット様の声が聞こえて、彼がポケットを探り小さな木箱を取り開くと。その中に中に銀色のチェーンに、水色とピンク色の石の付いた、ペンダンドが二つ並んで入っていた。
「まあ、綺麗な石のペンダンド」
「これは、父上からいただいたんだ「水色はボク」で「ピンク色はロレッテ嬢」に。このペンダントには不思議な力があるらしく、想い合う2人が遠くに居ても会えると言っていた」
「想い合う2人が会えるのですか?」
「そう、日に一度だけだけど、僕の方からロレッテ嬢に会いに行けるらしいんだ」
〈昔、父上が兄から貰ったと言っていた。使えるから確かめていないから、分からないと言っていたが。ロレッテとのお揃いの、お守りとしてならいいかなと貰ってきた〉
(オルフレット様との、お揃いのお守りは嬉しい)
お互いにペンダンドを付け合った所で、コンコンコンと扉が叩かれて時間切れとなった。ロレッテはリラを呼んでオルフレット様に渡す、茶葉などを用意して彼に渡した。
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
「いってくるよ、ロレッテ」
ロレッテは、彼の乗った馬車が見えなくなるまで見送りした。
❀❀❀
オルフレット様が乗る馬車には、白犬のシルベスターもいた。
「よかったね、オルフレット」
「ああ。でも、僕について来なくて、シルベスター兄さんが、側で守ってくれればいいんだけど」
馬車のソファに寝転ぶ子犬の姿のシルベスターは、無理だと首を振った。
「師匠に頼まれて、オルフレットを守らなくちゃならないし。日に数時間しか、ここに来れないのは知ってるよね」
「ええ、知っていますよ」
シルベスターの本体はウルラート国の、ベルク山から出れない。大昔、悪さばかりをしたフェンリルのシルベスターは、魔法使いによって山から出れず――日に数時間しか外に出られない。
「まったく、師匠のせいだよね」
「違うと思いますよ。悪さばかりした、兄さんのせいです」
「そうかな?」
「そうです」
お父様は焦り、ひたいの汗をハンカチで拭き、オルフレット様は頷いた。
「僕もそう思います……父上と母上はおしどり夫婦ですから」
〈母上は"父上ラブ"の上に、あの活発な性格では……城でのことを知り、父上のこと知りって無理だったのだろう〉
(よかれと思って知らせたのが、悪かったのね)
「ですがコローネル公爵、母上とメイドのエリーがロレッテ嬢と、コローネル夫人を守ってくれます」
〈エリーは騎士よりも強い、母上の護衛も務めているから安心だ〉
そうだった、そのサンドイッチ屋にはお母様もいる。センバン殿下が私ではなく、お母様に危害を加えたかもしれない。
「エリー殿がいるのですか、心強い。陛下のことは私めにお任せください。ロレッテ、オルフレット様の言う通り、明日から、オルフレット殿下が戻るまで、そのサンドイッチ屋に行きなさい。母さんにも伝えてくれ」
「わかりましたわ、お父様」
❀
話が終えて視察に向かうかと思ったが、オルフレット様はロレッテの手を握った。
「ロレッテ嬢と、しばらく会えなくなるな」
「仕方ありませんわ」
〈最近、ロレッテと一緒に過ごせていたから……寂しいと感じるな〉
(……私もですわ)
「オルフレット様の戻る日を待っております」
落ち込んだ様子の私達を気遣ってくださっのか、お父様が出発の時間が来るまでの間、二人きりにしてくれた。
「ロレッテ嬢、ここに座ってくれるかい?」
「はい、失礼します」
執務室と同じく、彼の膝の上に座った途端に抱きしめられた。
その腕は力強く。
〈ほんの少しだ。ほんのしばらくロレッテに会えないだけだ〉
(はい、ほんのしばらくです)
オルフレット様は心の中だけで語り、ロレッテをただ静かに抱きしめた。
「ロレッテ嬢はいつも可愛いな」
「オルフレット様だって、初めて見る執事姿は素敵ですわ」
「そうかな? それは嬉しい」
〈ロレッテに褒めてもらえるのは嬉しいが。本当は皇太子の兄上が視察に出向いたほうがいいが、あの様子では無理。だからといって第二王子のボクが視察に回れば「王太子はどうなさった?」と国民に不安を与える〉
(だから、あえて素性がバレない様に執事姿で回るのですね)
いつも、オルフレット様ばかり大変な目に遭ってばかり。せめて、気に入ってくださった茶葉と昨日用意したバタークッキー、スコーン、マドレーヌを包みましょう。
あと、上手く刺繍ができたハンカチも。
彼の側に寄りたくて身を寄せた。
なにか香りがしたのか、すんすんと香りを嗅ぐ仕草をしたオルフレット様。
〈甘く、良い香りだ。いつものロレッテから香る石鹸とは違う香り……香油も使ってなく、化粧もしていないとなると、これはロレッテ自身の香りか!〉
(まあ、私の香り⁉︎)
昨日、お風呂には入りましたわよね。
でも、オルフレット様にどんな香りがしているのでしょうか?
〈これは堪らない、僕を掻き立てる香りだ。時間が許すまで……嗅ぎたい〉
(ひゃっ、オルフレット様! 近い、近いですわ。待って、首はダメです……っ! 背中さわさわもダメです)
これ以上触られると、離れたくなくなくなるとロレッテは、オルフレット様の胸を押し見上げた。
「あー離れたくないな。ロレッテ嬢、すぐに終わらせて戻ってくるね」
「はい、お待ちしております」
彼が近付くのを感じてロレッテが目瞑ると「ちゅっ、ちゅっ」と、オルフレット様に口と頬に軽くキスされた。
「……オルフレット様のお戻りを待っております」
「あぁ、ロレッテ嬢は母上の所にちゃんといくんだよ。これは命令、絶対にね」
はい、とロレッテは頷いた。
〈おーっと、ロレッテに夢中で渡すのを忘れていた〉
オルフレット様の声が聞こえて、彼がポケットを探り小さな木箱を取り開くと。その中に中に銀色のチェーンに、水色とピンク色の石の付いた、ペンダンドが二つ並んで入っていた。
「まあ、綺麗な石のペンダンド」
「これは、父上からいただいたんだ「水色はボク」で「ピンク色はロレッテ嬢」に。このペンダントには不思議な力があるらしく、想い合う2人が遠くに居ても会えると言っていた」
「想い合う2人が会えるのですか?」
「そう、日に一度だけだけど、僕の方からロレッテ嬢に会いに行けるらしいんだ」
〈昔、父上が兄から貰ったと言っていた。使えるから確かめていないから、分からないと言っていたが。ロレッテとのお揃いの、お守りとしてならいいかなと貰ってきた〉
(オルフレット様との、お揃いのお守りは嬉しい)
お互いにペンダンドを付け合った所で、コンコンコンと扉が叩かれて時間切れとなった。ロレッテはリラを呼んでオルフレット様に渡す、茶葉などを用意して彼に渡した。
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
「いってくるよ、ロレッテ」
ロレッテは、彼の乗った馬車が見えなくなるまで見送りした。
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オルフレット様が乗る馬車には、白犬のシルベスターもいた。
「よかったね、オルフレット」
「ああ。でも、僕について来なくて、シルベスター兄さんが、側で守ってくれればいいんだけど」
馬車のソファに寝転ぶ子犬の姿のシルベスターは、無理だと首を振った。
「師匠に頼まれて、オルフレットを守らなくちゃならないし。日に数時間しか、ここに来れないのは知ってるよね」
「ええ、知っていますよ」
シルベスターの本体はウルラート国の、ベルク山から出れない。大昔、悪さばかりをしたフェンリルのシルベスターは、魔法使いによって山から出れず――日に数時間しか外に出られない。
「まったく、師匠のせいだよね」
「違うと思いますよ。悪さばかりした、兄さんのせいです」
「そうかな?」
「そうです」