嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 オルフレット様との会話が終わり、お手伝いに戻ろうとしたとき「ダメです、あっ、王妃!」との声のあとに。

「可愛い、初々しいわ! ロレッテさんと、うちのオルフレットは、なんていい恋をしているのかしら!」

 興奮した声と共に、厨房から突撃してきた王妃様に抱きつかれた。
 
「すべてが尊い、尊すぎる。わたくしとシル君にも、あんな初々しい時期があったわ、懐かしい」

 ギュッ、ギューっと、王妃様に抱きしめられた。

「シャンティ様、そこまでになさってください。ロレッテさんが驚いております」

「え? あら、ほんとだわ……ごめんなさいね」
「大丈夫です」

 と言いながら――ロレッテはそれどころではなかった。

(王妃様が……わ、私を抱きしめてくださった、それは温かく、王妃様から良い香りがしたわ)

「だって嬉しいの! 少し前まであの子、すごく落ち込んでいて心配だった……でも、今日は楽しそうに声を上げて笑う、オルフレットを見たのは久しぶりですわ!」

 優しそうに笑う王妃様の隣で、エリー様も「そうですね」と、微笑みながら頷いた。

 そうなれたのは、オルフレット様の声が聞こえたからだ。もし、あのまま聞こえなかったら、ロレッテ達はこんな風に笑いあえず、離れ離れになっていた。

 オルフレット様はどう思うかわからないけど、声が聞こえてよかった、大好きな人といまも一緒にいれる。
 そして、大好きな人のお手伝いを出来るのだもの。

「私、オルフレット様と一緒に過ごせて幸せです」

「ロレッテさん……いまが二人側で過ごせる楽しい恋愛の時期なのに、こんな事に巻き込んでしまって……ごめんなさいね」

「シャンティ王妃様……」

 学園で過ごす三年間。普段は淑女教育もあり、王子のオルフレット様と一緒に過ごす日々は少ない。

 この、学園生活は私達にとって長く過ごせて、恋人の様に過ごせる時期で、お互いをもっと知れる大切な時期なのだ。

「早く二人の時間が取れる様に、こんな事を早く終わらせてしまいたいのですけど……」

 微笑んでいた王妃様の顔が曇り、言葉が詰まる。
 
「ロレッテさんを巻き込んでしまった以上。知る権利がありますわね」


「知る権利?」


「ええ、今から少し秘密の話をします。ミンヤ、ロレッテさん、この話は誰にもしないでください。隣国ローリゲスの国王陛下と王妃、その周りの重役に何が起きているみたいなのです」

「「えっ?」」

 隣国といえば、セルバン殿下の国のことだわ。

「昨夜遅く、隣国に偵察に行ってた者から報告がはいりました。そうですわよね、エリー」

「はい、私の部下の報告によれば国王と王妃、その他の重役の者は今、ローリゲスの王城にはおらず離れの別荘で隔離され、いま昏睡状態にあると報告を受けました」

 この、衝撃の報告に驚きを隠せなかった。

「隣国ローリゲスの国王陛下様と、王妃様が昏睡状態?」

「そう……何者かに毒を盛られたようなの。だから私達もだけど、ミンヤ、ロレッテさんも気を抜かずにいて欲しい。セルバン殿下の事もあります、出来るだけわたくしとエリーが守りますが、危なくなったら逃げてください」

「王妃様を置いて?」だなんて、そのようなことできない。

「ロレッテさん、オルフレットを悲しませたくないの……」

 そう言われて終えば、ロレッテには頷くしかなかった。

「……はい、分かりました」

 

 王妃様との話が終わり、2階の与えられた部屋のベッドで寛いでいた。お母様は下で王妃様、エリー様と話をしていて、部屋に戻ってきていない。

 あのとき。王妃様に隣国ローリゲスの国王陛下、王妃様が毒を盛られた? と、話を聞いたとき。驚きの他に、ロレッテの心はざわざわし始めた……これはメアリスさんが"悪役令嬢""イベント""フラグ"と言ったときと同じだった。

(クッ、頭が痛い……ウウッ、何かの、記憶が流れてくる)

 ドサッ!

『フフフ、アハハハっ――!!』
 
 それは何処かの部屋の中で――ボサボサの髪と目の下のクマ……そして、黒いローブを着た私が高笑いをし、手に紫色をした液体の入った、ガラスの瓶の様なものを持っていた。

『フフ、ついに出来た。この×××さえあれば誰にも気付かずヤレる。私を裏切ったあの人達に報復を、覚めやらぬ眠りを……お見舞いする』

 ――覚めない眠りを、お見舞いする?

「ロレッテ? 大丈夫、ロレッテ!」

 体を揺らされ目が覚めると、いま見ていた映像と言葉は……粉々に崩れ、砂の様に消えていった。
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