嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
5
オルフレット殿下はロレッテが学園に復帰したことを知ったのか、それもともお忙しいからか屋敷を訪れることはなくなった。学園では相変わらず、周りの生徒達はうるさいがなれてしまえばどうってことない。
(メアリスさんとも、偶然でも会わないから平和ね)
学園の昼休み1人になりたくて、書庫へ向かおうと別棟に続く渡り廊下を歩くロレッテの目の前に、オルフレット殿下の姿が見えた。
(あら? 教室では見かけなかったのだけど学園にいらっしゃっていたのですね。でもメアリスさんと一緒ではないのですね)
あの日オルフレット殿下とメアリスさんが庭園で抱き合う姿を見たのは、ロレッテだけではなく他の生徒も見ていたから、いま学園の中で2人は噂の的だ。
関わるとまた色々言われてしまうから、頭を下げて通り過ぎようとしたのに、ロレッテを見つけると面倒なことに手をあげて声をかけてきた。
「ロレッテ嬢、体はもういいのか?」
この国の第2王子から声をかけられて無視することは、貴族として許されない行為となる。ロレッテは近付いたオルフレット殿下から一歩後ろへと下がり、スカートをつかみ会釈した。
「ごきげんよう、オルフレット殿下……ご心配をおかけしましたが、もう平気ですわ」
「……そう、それならよかった。何かあったら遠慮なく僕に申してくれ」
「ありがとうございます、オルフレット殿下。――そうでしたわ。学園に来られない間、お見舞いの品もありがとうございました」
「いや……」
「それでは書庫へ向かう途中なので失礼いたします」
「……あ、ああ」
オルフレット殿下にお礼と挨拶だけして、足早ですり抜け、お互いに背と背を向けたとき。
〈……ショックだ。ロレッテがボクのことを殿下付けで呼んだ。早く、あのときの誤解を解きたい〉
どこからか、オルフレット殿下に似ていた。
〈ごめんロレッテ、僕は……〉
「僕は……」の声の続きが気になり、後ろを振り返ってしまった。――え。すでに立ち去ったと思っていた。
〈どうした、僕に何か伝えたいことがあるのか? ……婚約破棄は絶対にしない〉
――婚約破棄?
いま私に聞こえてくる声は、オルフレット殿下の声に似ているが、殿下の口元は全く動いておらず。ただ、こちらを見ているだけだった。
――どういう事なのかしら?
オルフレット殿下をさらに凝視すると、またあの声が聞こえた。
〈そんなに僕を見つめてどうしたのだ? そんな可愛い瞳で見つめられると……照れる〉
ロレッテは驚き、さらに不躾にもオルフレット殿下を見つめてしまった。
〈……可愛い〉
「か、可愛い?」
「あっ」
〈いま僕は口に出してしまったのか。いいや、ロレッテになら聞かれてもいい。その優しげな瞳、小さな鼻、ふっくらな唇……いや、ロレッテの全てが尊い……〉
(尊い⁉︎)
突然の言葉で照れてしまい、頬に朱がさす。
貴族として、オルフレット殿下の婚約者として王妃教育も受けてきた、ロレッテはある程度の事では動揺しない。
(だけど、これは無理ですわ)
〈ん、ロレッテの頬が赤い? まだ体調が悪いのか? 医務室に連れていなかくては……いや、僕はロレッテに嫌われている。しかし、他の奴にロレッテを触らせたくない〉
殿下もまた、王子として表情はあまり変わらないため「氷の王子」と呼ばれているし。あの子が好きなはずなのに、ロレッテを労わろうとしてくれている。
(彼がわからない……)
(メアリスさんとも、偶然でも会わないから平和ね)
学園の昼休み1人になりたくて、書庫へ向かおうと別棟に続く渡り廊下を歩くロレッテの目の前に、オルフレット殿下の姿が見えた。
(あら? 教室では見かけなかったのだけど学園にいらっしゃっていたのですね。でもメアリスさんと一緒ではないのですね)
あの日オルフレット殿下とメアリスさんが庭園で抱き合う姿を見たのは、ロレッテだけではなく他の生徒も見ていたから、いま学園の中で2人は噂の的だ。
関わるとまた色々言われてしまうから、頭を下げて通り過ぎようとしたのに、ロレッテを見つけると面倒なことに手をあげて声をかけてきた。
「ロレッテ嬢、体はもういいのか?」
この国の第2王子から声をかけられて無視することは、貴族として許されない行為となる。ロレッテは近付いたオルフレット殿下から一歩後ろへと下がり、スカートをつかみ会釈した。
「ごきげんよう、オルフレット殿下……ご心配をおかけしましたが、もう平気ですわ」
「……そう、それならよかった。何かあったら遠慮なく僕に申してくれ」
「ありがとうございます、オルフレット殿下。――そうでしたわ。学園に来られない間、お見舞いの品もありがとうございました」
「いや……」
「それでは書庫へ向かう途中なので失礼いたします」
「……あ、ああ」
オルフレット殿下にお礼と挨拶だけして、足早ですり抜け、お互いに背と背を向けたとき。
〈……ショックだ。ロレッテがボクのことを殿下付けで呼んだ。早く、あのときの誤解を解きたい〉
どこからか、オルフレット殿下に似ていた。
〈ごめんロレッテ、僕は……〉
「僕は……」の声の続きが気になり、後ろを振り返ってしまった。――え。すでに立ち去ったと思っていた。
〈どうした、僕に何か伝えたいことがあるのか? ……婚約破棄は絶対にしない〉
――婚約破棄?
いま私に聞こえてくる声は、オルフレット殿下の声に似ているが、殿下の口元は全く動いておらず。ただ、こちらを見ているだけだった。
――どういう事なのかしら?
オルフレット殿下をさらに凝視すると、またあの声が聞こえた。
〈そんなに僕を見つめてどうしたのだ? そんな可愛い瞳で見つめられると……照れる〉
ロレッテは驚き、さらに不躾にもオルフレット殿下を見つめてしまった。
〈……可愛い〉
「か、可愛い?」
「あっ」
〈いま僕は口に出してしまったのか。いいや、ロレッテになら聞かれてもいい。その優しげな瞳、小さな鼻、ふっくらな唇……いや、ロレッテの全てが尊い……〉
(尊い⁉︎)
突然の言葉で照れてしまい、頬に朱がさす。
貴族として、オルフレット殿下の婚約者として王妃教育も受けてきた、ロレッテはある程度の事では動揺しない。
(だけど、これは無理ですわ)
〈ん、ロレッテの頬が赤い? まだ体調が悪いのか? 医務室に連れていなかくては……いや、僕はロレッテに嫌われている。しかし、他の奴にロレッテを触らせたくない〉
殿下もまた、王子として表情はあまり変わらないため「氷の王子」と呼ばれているし。あの子が好きなはずなのに、ロレッテを労わろうとしてくれている。
(彼がわからない……)