嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

47

 ――早く、ロレッテに会いたい。
 
 しかし、フクロウが届けたのはアルータ橋を警備する、騎士からの手紙だった。そこに書かれていた内容を確かめる為、ボクとカウサは馬車に揺られて橋へと向かっていた。

(何事もなければ王都に向かっている時間だな。ロレッテは寂しがっていないか? 泣いていないと、いいな……終わったら、すぐに向かうからね)

 隣国ローリゲスに伝えたアルータ橋の修復を知らず、現れた隣国の商人。その商人は父上が書いたとされる、書状と注文書を持っていた。

 いま、自由に動けるのはボクしかいない。

「騎士から話を聞いた後、父上にフクロウを飛ばさないとな」

 ほんとうは王太子が行うはずだった視察。しかし、当の兄上は女性にうつつをぬかして使えない。大役を第二王子のボクが任せられて、父上に軍事秘密の通達フクロウを貸していただいた――しっかり、役目を果たさなくてはならない。

 だが、ロレッテに久しぶりに会えると、喜んでいたことを知る、カウサはボクに提案した。

「オルフレット様。騎士に話を聞くのは私だけでも、いいのではないでしょうか?」

「ん?」

 カウサが一人で騎士から話を聞くと言い出した。自分を橋に置いてゆけと言っているらしい。――優しいなカウサ。これはボクが父上から任された仕事だ、ボク自身が話を聞きかなくてはならない。

「ダメだ、ボクが父上に任された仕事、一緒に話を聞くよ」

「す、すみません……出過ぎた真似をいたしました」
「いや、気にするな。ありがとうカウサ」

 ごめんロレッテ。君のところに向かうのは、もう少し後になるよ。

 



 

 修復中のアルータ橋に着き、警備をする騎士に話を聞いた。

「やはり、その商人は怪しいな」

「私もそう思ったのですが……商人が持っていた陛下の書状が本物であった為――商人を引き止めることも、捕まえることも出来ませんでした」

 書状になんらかの不備があれば、商人を捕らえる事が出来た。しかし、国王陛下が記した書状を持つ商人を勝手に捕まえる事はできない。商人は国王陛下の命によって、薬草を運んでいるのだ。
 
 ボクとしてはその商人が運んでいた薬草と、父上が書いたとされる書状と、注文書が気になる。商人の男は隣国ローリゲスに戻ったのだろうか? それともまだ近くにいるかもしれない。一応、その商人を探してみるか。
 
「報告はこれで終わりか? 書状と注文書のことは父上にフクロウを飛ばして聞いてみる。カウサ、商人を探しに行こう」

「はい、オルフレット様」

 騎士から聞いた報告をまとめてフクロウを飛ばし、国境近くの近くの村や町を回ってみたが、騎士から話を聞いた、商人の男は見つからなかった。

 しばらくして、フクロウが父上の所から戻ってきた。

「カウサ、父上は書状と注文書、薬草のことは知らないみたいだ」

「では、誰かが国王陛下に成りすまして、書状と注文書を書いたのですね」

「そうなるな……もしかすると、その書状と注文書を書いたのは兄上かもしれない。兄上は王太子として、執務に必要な判、書類などを父上から渡されている」

 だが、ダメな人になっていく兄上を止められない。

 父上も、犯人は兄上だと分かっているようだが、ボクのことを思い。あとは側近とで調べるとおっしゃったから、ボクがこれ以上、口を出すわけにはいかない。王城のことは父上にお任せして、ボク達は国境付近まで商人を探し足を延ばした。

「ここから先は隣国ローリゲスの国境に差し掛かる。日も暮れてきたな、商人探しは諦めよう」

「かしこまりました」
「カウサ、王都に戻るぞ!」

(やっと、ロレッテ嬢に会いに行ける。しかし、ここから王都までは遠いな)

 ロレッテに「もう少し待っていて欲しい」とフクロウを飛ばした。
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