嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 ロレッテから抱きつくと、オルフレット様は私をキツく抱きしめた。

「ロレッテ嬢、会いたかった。何か変わったことはなかったかい?」

「はい、オルフレット様は?」

 彼の胸から見上げて聞くと、優しい瞳がさらに細められた。

「視察は大変だが、いろんな人から話を聞く事ができて為になったよ」

「まあ、それは良かったですわ」

「ああ、国民の声をじかに聞けたし、国民達が食糧難に陥る事なく、日々普通に生活ができていた。父上が――いや、国王陛下が国土全体を見ているからだと、分かった」

〈いつの日にか父上の様になりたい〉

(私も、シャンティ王妃様のようになりたいですわ。オルフレット様が……もし、次期の国王陛下となられるのなら、隣に寄り添い貴方を支えます)

 久しぶりに会えた喜びで抱き合う2人……「くうっ」と、どちらかのお腹が小さく鳴った。

〈……い、いま、ロレッテのお腹が鳴ったのか?〉

(はい……私のお腹が鳴りましたわ。オルフレット様に聞こえてしまって……恥ずかしい)

 だからと言って離れなくない。

〈そうか、昼から食事を摂らずボクの帰りを、待っていてくれたんだね。……それにしても可愛いお腹の音だったな、もう一度鳴らないかな?〉

(もう一度だなんて、やめてください)

 恥ずかしくて、彼の胸にグリグリ顔を埋めた。
 頭の上で「くすっ」と小さな笑い声が聞こえた。

「時間も時間だ、ボクもお腹すいた。どこか食べに行こうか」

「あ、それなら……」

(でも、作った料理は冷えてしまったわ)

 お昼を一緒に食べようと用意した料理。時間が経ち冷えてしまったし、そんな料理をオルフレット様に出すことはできない。 

(どの料理も火は通してあるし、日の当たらない所にしまって、明日の朝に温め直して朝食にすれば良いわね)

「そこのテーブルの料理はロレッテ嬢が作ったの?」

「はい。あ、いいえ……私はリラのお手伝いをしただけです……中央の焦げている、キッシュは私が焼きましたわ」

〈何? ロレッテが焼いたキッシュだと!〉

「食べたる! 食べたい。料理は温め直したりすれば食べれる。カウサも外に戻って来ているから、リラもここに呼んでみんなで食べよう」

 そのオルフレット様の提案に頷き、2階で休んでいるリラを呼んだ。

 

 ❀
 


 テーブルに温められたホットサンド、キッシュ、スープとサラダ。デザートにはワッフル、リラが入れた紅茶が並ぶ。

「美味しそうだ、いただきます」
「いただきます」

 カウサ様、リラも同じテーブルにつき。
 遅い昼食兼、夕食が始まった。
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