嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

58

 早朝、王城の前では旅支度を終えた陛下と王妃、そして城を預かる第二王子オルフレットとロレッテがいた。

「オルフレット、あまり頑張りすぎないでね」
「そうだ、ゆっくりでいいんだぞ」

「わかっております、父上、母上。旅の無事を祈ります」

「ありがとう」
「行ってきますね」

 国王陛下と王妃は長年の戦争がようやく終幕し、平和を取り戻した、友好国ユートレイアの復興祭に招かれていた。はじめは国の事情もあり陛下は断ろうとしたが、ユートレイア国の王と妃にウルラート国はたくさんの恩があった。

 陛下と王妃、オルフレットで集まり話し合い、参加することを決めた。友好国ユートレイアまでの移動は魔導馬車で5日はかかる。約1ヶ月の間、国王陛下と王妃は王城を開けることになった。

「ロレッテさん、オルフレットをよろしくね! 無理をしようとしたら止めてね」

「はい、王妃様」

 国王陛下と王妃が旅立った後、オルフレット様は私に書類を頼むと、彼は執務室で薬草図鑑を眺めていた。
 
 それは旅立った国王陛下と王妃の直ぐ後に連絡が入ったのだ。収容された古別荘で兄上を含めてた中にいたもの全ての者が、いま昏睡状態におちいったと報告を受けた。

 オルフレット様はただちに医者を派遣して、昏睡の原因を調べてはいるが原因がわからずじまい。古別荘へと向かった医者と騎士からの報告で、何やらお香の様な物を焚いた跡が残っていたと受けた。

「お香の跡? ……もしかすると、この薬草が原因か?」

 オルフレット様が発した言葉とお香、薬草と聞いて、自分の鼓動が早くなるがわかった。少し怖いけど、ロレッテはその薬草が気になってしかだがない。

「ロレッテ嬢?」

「あ、オルフレット様――先程、宰相宛に送った書類は確認の後、こちらへ戻すそうです」

「そうか、わかった」

〈その書類を待つ間、ロレッテとお茶にするか? いや、ロレッテの癒しが欲しいな〉

(私の癒し?)

 前に頼まれた膝枕かしら? と、ソファに移動しようとしたが。先にオルフレット様がソファに座り、ポンポンとご自身の足を叩いた。

「今日は頑張るロレッテ嬢に、ボクが膝枕をしょう」

 オルフレット様の膝枕⁉︎

「だ、ダメです、オルフレット様!」

 もうすぐ皇太子となる彼に、膝枕をしていただくなんて恐れ多いし……照れる。頬を熱くして、躊躇してしまう私にオルフレット様は微笑み。

「おいで、ロテ」

「あ、あのその呼び方はおやめください……そうですわ、私がオルフレット様を膝枕します。それではダメですか?」

「うん、ダメ」

 即答されてしまった。
 それでも近付こうとしない私。

〈ロテはそんなにボクの膝に乗るのが嫌なのか……残念だな〉

(もう、そんな悲しい声を聞かさないでぇ)

 ロレッテは彼がいるソファに近付き、失礼しますと膝に寝転んだ。後頭部に感じるオルフレット様の太ももの柔らかさ、なんとも言えぬ心地よさ。ああ、下からオルフレット様を見上げるなんて……は、恥ずかしくて目をキュッと瞑った。

〈照れてる、可愛い〉
(…………)

「ロレッテ嬢、そのまま少し眠るといい」
「えっ」

「ほら、目の下に隈ができている」 

 ウソ。しっかりお化粧で隠したはずの隈に気付くなんて、驚く私の頬に彼の指先が優しく触れた。

「ゆっくり、眠りなさい」

「……はい、オルフレット様のお言葉に甘えて少し眠りますね」

「うん」

 彼にやさしく髪を撫でられながら、ロレッテは目を瞑った。
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