嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
59
何気ない、小さな変化だった。
王城の門番が寝坊をして遅れて現れたり、騎士が欠伸をしたり、オルフレット様とカウサ様の起きる時間がほんの少し遅くなったりと、ほんの少しずつ変化し始めた。
あの人たちから解放されて、ほっとしたのと。
視察ものあとも実務をこなしていて、疲れからきているのだと思っていた。
なぜ気付かなかったのかというと。オルフレット様とカウサ様は顔色も良く食欲もあり、よく眠れているのか体調が良さそうに見える。それは、王城で働く人達も同じ様に見えた。
1週間たった早朝。王都の中央に差し掛かるとき、いきなり乗っていた馬車が止まった。
「お父様、事故でしょうか?」
「そうかもしれんな。何があったのか聞いてきてくれ」
「かしこまりました、旦那様」
御者が馬車を離れて話を聞きに行行った。しばらくしてガヤガヤと外で話す声が気になり窓から覗くと。私たちと同じく多くの馬車が、立ち往生している姿が見えた。
それを見に、王都市民たちも集まっている。
「ただいま戻りました」
「何があったんだ?」
話を聞きに行った従者の話によると、馬車が通る道路の真ん中に人が倒れていたらしい。いま街医者と王都警備人が呼ばれて倒れた人物を調べたところだと話した。
その人物は馬車に跳ねられたでもなく、怪我もなくただ馬車道の真ん中で眠っていたみたいです。と御者は私たちに伝えた。
「ありがとう、倒れた人に怪我がなくてよかったわ」
「そうだな。でも、こんな往来で眠るとは大物だ」
倒れた人物は診療所へと運ばれて、他の警備員は見物人の整理、馬車の整理を始めた。私たちの馬車もスムーズに動き始める。それはロレッテたちが王城に入ってから、約1時間も経過していた。
到着時間よりも、遅れて着いた王城のおかしな点に気付く。いつもいる門番が、王城の門を開けたまま立場にない。
――他の騎士達の姿もいない。
メイド達も誰1人、王城の外と中に人の気配がなく音もしない。まるでひと夜で、人が消えたもぬけのからの様な王城だった。
「オルフレット様は大丈夫なの?」
お父様と執務室に向かい扉を開けると、オルフレット様が執務机の上に伏せていた。
「オルフレット様!」
執務机の近くにカウサ様も倒れている。慌てて2人に近付くと息はあるらしく、ただ眠ていることがわかったが。いくら呼び掛けても身体をさすっても、オルフレット様とカウサ様が目を覚さない。
「お父様、オルフレット様とカウサ様が目を覚まさないわ!」
「そうだな……ロレッテはここにいなさい。私は王城の専門医を呼んでくる」
「はい、お父様」
カウサ様をお父様と動かしソファに寝かせて、隣の仮眠室から毛布を持ってきて2人に掛けた。2人は急に眠気に襲われて伏せてしまったのか、書類がくしゃくしゃで床にも散らばっていた。
――何が起こったの?
それに、このほろ苦く、ツーンとする香りはなに?
リラックスできるハーブの香りかしら? ……でも、オルフレット様は前にラベンダーの香りの方が、落ち着くとおっしゃっていた。
仮眠室にもラベンダーのお香が置いてあったし、執務室でリラックスハーブを焚いた形跡はない。
お父様が呼びに向かった、専門医の方が来れば何かわかるはず。ロレッテが今出来ることをしようと、執務机から落ちた書類を拾い集めていた。その拾い上げた書類の中に、サンム草の領収書と書いた紙を見つけた。その領収書の内容欄に薬香と記されていた。
まさか、この香りはサンム草を焚いた匂い?
もさけしてサンム草には心を落ち着かせたり、リラックスする効果があるの?
いきなり、ズキッ、頭に鈍い痛みが走る。
「い、つっ……!」
これは前と同じ痛みだわ。
このサンム草には何かあるの? そうだオルフレット様が、この前に古本屋で購入した図鑑はどこ? 執務室を探すと彼の上にその薬草図鑑を見つけた。
カウサ様が眠るソファーの反対側に座り、折り目の付いたページを開いた。そのページに載るサンム草の絵を見たとたんに、また痛みが走る。
まるで見てはいけないものよう。
痛みを我慢しつつページを見続けた。
効能は? リラックス? 心を休める?
その他には載っていないの、指がページの余白部分に触れると、緑に光る隠し文字が現れた。
「えっ、なに? この文字は何?」
見たこともない文字が、なぜかロレッテには読めた。
「使用目的、一度に使う量を間違えると……昏睡状態に陥る毒薬草の一種でもある。毒薬草の一種? 毒薬草なら解毒薬があるはず?」
記された、全ての光る文字を読んだけど、解毒薬のことがどこにも書いていない。ただ、女神の涙? 魔法水? とすり鉢などの絵が記されているだけ。
次のページに書いてあるの? 期待してめくった、次のページには違う薬草が載っていた。
「ウソ……ない、どこにも毒草の解毒薬が載ってないわ」
ウソ、ウソよ――ガツっと頭を殴られたような、強烈な痛みに目の前が真っ白になった。
王城の門番が寝坊をして遅れて現れたり、騎士が欠伸をしたり、オルフレット様とカウサ様の起きる時間がほんの少し遅くなったりと、ほんの少しずつ変化し始めた。
あの人たちから解放されて、ほっとしたのと。
視察ものあとも実務をこなしていて、疲れからきているのだと思っていた。
なぜ気付かなかったのかというと。オルフレット様とカウサ様は顔色も良く食欲もあり、よく眠れているのか体調が良さそうに見える。それは、王城で働く人達も同じ様に見えた。
1週間たった早朝。王都の中央に差し掛かるとき、いきなり乗っていた馬車が止まった。
「お父様、事故でしょうか?」
「そうかもしれんな。何があったのか聞いてきてくれ」
「かしこまりました、旦那様」
御者が馬車を離れて話を聞きに行行った。しばらくしてガヤガヤと外で話す声が気になり窓から覗くと。私たちと同じく多くの馬車が、立ち往生している姿が見えた。
それを見に、王都市民たちも集まっている。
「ただいま戻りました」
「何があったんだ?」
話を聞きに行った従者の話によると、馬車が通る道路の真ん中に人が倒れていたらしい。いま街医者と王都警備人が呼ばれて倒れた人物を調べたところだと話した。
その人物は馬車に跳ねられたでもなく、怪我もなくただ馬車道の真ん中で眠っていたみたいです。と御者は私たちに伝えた。
「ありがとう、倒れた人に怪我がなくてよかったわ」
「そうだな。でも、こんな往来で眠るとは大物だ」
倒れた人物は診療所へと運ばれて、他の警備員は見物人の整理、馬車の整理を始めた。私たちの馬車もスムーズに動き始める。それはロレッテたちが王城に入ってから、約1時間も経過していた。
到着時間よりも、遅れて着いた王城のおかしな点に気付く。いつもいる門番が、王城の門を開けたまま立場にない。
――他の騎士達の姿もいない。
メイド達も誰1人、王城の外と中に人の気配がなく音もしない。まるでひと夜で、人が消えたもぬけのからの様な王城だった。
「オルフレット様は大丈夫なの?」
お父様と執務室に向かい扉を開けると、オルフレット様が執務机の上に伏せていた。
「オルフレット様!」
執務机の近くにカウサ様も倒れている。慌てて2人に近付くと息はあるらしく、ただ眠ていることがわかったが。いくら呼び掛けても身体をさすっても、オルフレット様とカウサ様が目を覚さない。
「お父様、オルフレット様とカウサ様が目を覚まさないわ!」
「そうだな……ロレッテはここにいなさい。私は王城の専門医を呼んでくる」
「はい、お父様」
カウサ様をお父様と動かしソファに寝かせて、隣の仮眠室から毛布を持ってきて2人に掛けた。2人は急に眠気に襲われて伏せてしまったのか、書類がくしゃくしゃで床にも散らばっていた。
――何が起こったの?
それに、このほろ苦く、ツーンとする香りはなに?
リラックスできるハーブの香りかしら? ……でも、オルフレット様は前にラベンダーの香りの方が、落ち着くとおっしゃっていた。
仮眠室にもラベンダーのお香が置いてあったし、執務室でリラックスハーブを焚いた形跡はない。
お父様が呼びに向かった、専門医の方が来れば何かわかるはず。ロレッテが今出来ることをしようと、執務机から落ちた書類を拾い集めていた。その拾い上げた書類の中に、サンム草の領収書と書いた紙を見つけた。その領収書の内容欄に薬香と記されていた。
まさか、この香りはサンム草を焚いた匂い?
もさけしてサンム草には心を落ち着かせたり、リラックスする効果があるの?
いきなり、ズキッ、頭に鈍い痛みが走る。
「い、つっ……!」
これは前と同じ痛みだわ。
このサンム草には何かあるの? そうだオルフレット様が、この前に古本屋で購入した図鑑はどこ? 執務室を探すと彼の上にその薬草図鑑を見つけた。
カウサ様が眠るソファーの反対側に座り、折り目の付いたページを開いた。そのページに載るサンム草の絵を見たとたんに、また痛みが走る。
まるで見てはいけないものよう。
痛みを我慢しつつページを見続けた。
効能は? リラックス? 心を休める?
その他には載っていないの、指がページの余白部分に触れると、緑に光る隠し文字が現れた。
「えっ、なに? この文字は何?」
見たこともない文字が、なぜかロレッテには読めた。
「使用目的、一度に使う量を間違えると……昏睡状態に陥る毒薬草の一種でもある。毒薬草の一種? 毒薬草なら解毒薬があるはず?」
記された、全ての光る文字を読んだけど、解毒薬のことがどこにも書いていない。ただ、女神の涙? 魔法水? とすり鉢などの絵が記されているだけ。
次のページに書いてあるの? 期待してめくった、次のページには違う薬草が載っていた。
「ウソ……ない、どこにも毒草の解毒薬が載ってないわ」
ウソ、ウソよ――ガツっと頭を殴られたような、強烈な痛みに目の前が真っ白になった。