嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

63

 これで準備は終わった。ロレッテは行き先のヒントを得るため、図鑑のサンム草のページを開き余白の部分に触れる。

 図鑑は前と同じ。
 女神の涙。
 魔法水。
 乳鉢の文字が浮かんだ。

 だけど、前のように頭痛は起こらず。
 スラスラと浮かびあがった文字が読めた。
 この乳鉢はすり潰すもの、魔法水は文字の通りに魔法の水。

「この"女神の涙"は薬草の名前? 別名――デーア……ラルム?」

 ――デーアラルムという名の薬草?

「なになに? なに読んでるの?」
 
「この図鑑に、オルフレット様達が目を覚ますための解毒草のヒントがないか、今調べているの」

「へぇ解毒草のヒント? ……ところでロレッテちゃんは、この図鑑の隠し文字が読めている?」

 可愛い前足で、シルベスター君は図鑑をチョンと指差す。

「ええ、読めるけど……」
 
「ほぉ、すごいねぇ~この図鑑、見たところによると特殊な魔法がかかっている。でも、それがわかるだけで、ボクとオルフレットでこの隠し文字を出せても文字が読めないね」

「出せても、隠し文字が読めない?」
 
「ウン、文字の解読は無理だね。そのデーアラルム草だっけ? この図鑑に載ってる?」

「いま調べてみるわ」

 シルベスター君に聞かれて、図鑑をめぐりデーアラルム草のページを探すと。終わりのページに「幻の薬草」と書かれて【女神の涙】デーアラルム草の名前だけが載っていた。

 隠し文字があるかしら? と。サンム草のときの様に余白の部分に触れると、隠し文字が浮かんだ。

「おお、ロレッテちゃんなんて書いてある?」

「えーっと、デーアラルム草はウルラート国の、ベルク山の頂上に生えているといわれ、特殊な能力を持つ者にしか探せない【幻の薬草】である。と書かれているわ」

「幻の薬草かぁ~ますます、大変なニオイがする」

「特殊な能力が、引っかかるわね」
「ええ、そうかも
 
(……あ、でも待って。女神が私に植物全種を見極める力を授けてくれなかった? ……その力でデーアラルム草を探せないかしら?)

 まずは、薬草が生えるベルク山を探さないと。

「ベルク山、ベルク山……聞いたことがない山なのよね」

 薬草図鑑が示した、ウルラート国にあるベルク山。
 地図を開き隅々まで探したが、何処にもベルク山の名前が書かれていない。――おかしい。この国のどこかにある山のはずなのに……見つからない。

 解毒草のデーアラルム草までわかったのに手詰まり? 地図を呆然と眺め、考え込む私に。

「ロレッテちゃん、ウルラート国の古地図を探して」

「古地図(こちず)? わかった探してくる」

 地図を見つけた本棚に古ぼけた地図を見つけた。それを持ってシルベスター君のところに帰り、古地図を開く。この地図は100年前以上のものらしく、今とは地形が違っていた。

 シルベスター君が地図を眺め頷く。

「ロレッテちゃん、北の国境近くのウルラート国と、北国ノルド国の国境沿いにベルク山がない?」

 え? 

「北のウルラート国とノドル国の国境沿い? あ、ああ! シルベスター君の言うとおり国境沿いにベルク山があるわ。でも今はローブル山という山に名前が変わってる」

 2つの地図を交互に見ると、100年以上前と今とでは所々名前が変わっていた。
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