嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 公爵が飛ばしたフクロウは1日で、友好国ユートレイアで舞踏会に参加をする、国王陛下と王妃の元へと手紙が届く。

 このフクロウは普段使いのフクロウとは違い、王族だけが使用できる特殊なフクロウだ。

 勿論、舞踏会の参加者たちに、このフクロウの姿は見えていない。2人は周りに休憩をすると断りを入れて、舞踏会の会場から、場所をバルコニーへと移した。
 
 その手紙は息子のオルフレットからではなく、コローネル公爵からであった。届けられた手紙を陛下が確認したところ、書かれていた内容に2人は驚きを隠せないでいた。


[国王陛下、王妃、至急のご報告をお許しください。
 王城にてオルフレット殿下、側近など城の使用人すべてが、なんらかの眠り攻撃を受けました。
 王族しか使用できない呼び鈴を使用し、魔法使い殿を呼ばせていただきました。  デュック]


「なに? オルフレットと使用人達が全て原因不明の眠りに付いただと?」

 王族は毒草、眠り草などの攻撃に耐えられるよう、幼な頃から訓練をしている。やはり最近の出来事でいつもの訓練を怠ったせいだな……ぐっ、これは私がしっかりしていなかったせいだ。

 頭を抱える陛下に、王妃がそっと寄り添った。

 これは気を落ちなさる陛下を支えるためでもあるが、舞踏会の会場から、仲の良い国王と王妃だと周りに見せるためでもあった。

「あなた、私達からも最果ての地で研究に励んでいる、魔法使いのアルカ先生に文を送りましょう」

「そうだな、早速文を送ろう」

 陛下は頷き胸元から特殊な紙を取り出したが……少し考えた。この前、アルカ先生に出した文だが。帰ってきた返信には『魅了ごときなんかで私を呼ぶな、ご自身でなんとかしてください』と断られていた。

 今回はどうだ……先生は動いてくれるのか?
 
 迷いながらも文を書きフクロウに持たした。
 夜空に飛び立つフクロウを見送り思う。

「先生がこれで動いてくれるとありがたい……シャンティ、私たちも今夜の舞踏会が終わり次第、国に戻るぞ」

「わかりました。わたくしは近衛騎士にその様に伝えてきます」

 陛下の元を離れてカトレア王妃はバルコニー近くに待機する近衛騎士に、この事を周りに悟られない様に伝えた。
 そこから会場にいる従者、メイドに直ぐに連絡がいき帰りの支度が始まる。

 陛下の元に戻り2人はユートレイア国の陛下と王妃にご挨拶に向かった。


 
 ❀



 ここは最果ての地の魔法使いが住む温室に、陛下によって飛ばされた、フクロウは舞い降りた。

「ぽーぽー」

 温室の中で作業する黒いローブを身につけた人物は、フクロウの鳴き声に顔を上げた。

「おぉポーちゃん、いらっしゃい。さっきの呼び鈴といい、こんな所に来るなんて珍しいね。……ふむ、国王陛下から用とは……前のバカみたいな内容だと断るぞ」

 訓練はつけてやったんだと、文を見て内容を知り少し考える。

(ふむ、これは面白い)

 ようやくワタシが書き残した、図鑑の隠し文字を読める者が現れたのだな。そうでもないと癒し草のサンム草が多情摂取で、眠り草に変わることを知るすべがない。

 ――遂にワタシの後継者となる人物が現れたのか?
 
 魔法使いはウキウキとローブの懐から手鏡を出して話しかけた。

「[おーい、シルベスター聞こえるかい?]」と。
 


 ❀


 
 シルベスター君は軽快に走り夕方前に、ロレッテはローブル山に続く森の前についた。

「シルベスター君この森を抜けて、ローブル山を登れば。山の頂上に女神の涙――デーアラルム草が生えているの?」

 うーん。とシルベスター君は首を傾げ。

「ごめん、薬草について詳しくないから……行ってみないことにはわからない。よく山頂でお昼寝はしてたけど……」

「だとしたら、森を抜けて頂上へ行くしかないわね」
 
「ロレッテちゃん森に入る前に虫刺されとかあるから、それに効く薬草を積んだほうがいいから。薬草を【鑑定】してみて」
 
「【鑑定】? わかったやってみるわ」

 シルベスター君から降りて、近くの草むらを【鑑定】してみる。ロレッテの目の前に記される草、草、草――草しかないこの場所に『クラウト草』を見つけた。この草は体力回復になる薬草。その近くに傷薬になるカーニャ草をみつけた。

(変わった薬草が生えているけど、虫除けの薬草は?)

 草をかき分けて進み虫除けの薬草、フギオ草という赤い実をつけた薬草を見つけた。

(あった、この草を体に身につければいいのね)

 ロレッテは虫除けの薬草を摘んだけど、それの使い方が分からない。取り敢えず髪と服、腰回り、ブーツの間にもその薬草を差し込み、身体中を虫除けの独特の匂いをまとう。

「フギオ草の香りって、何処となくミントに似ているわ。シルベスター君どう?」

「え? ……プッ、プププ。いいんじゃないかな~昔この辺に住んでいて、ボクを神と祭り上げていた……ズズ民族の人に似てるから面白い!」

 チラチラとロレッテを見て、シルベスターはプププと笑い転げた。
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