嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 虫除けになる薬草を身体中に指して、大笑いのシルベスター君。段々と恥ずかしくなってきたけど、無理に刺されるよりはマシだ。

「シルベスター君、笑いすぎです」
「ごめん、ごめん、行こうか」

 シルベスター君と意気込んで森に入る。女神に会い昔の記憶を見たからか。森の中がなつかしく感じる――昔の両親と出かけた山でわらび、ゼンマイ、タラの芽、あけび、ざくろ、キノコ採りもしてきた。

(ハッキリとは思い出さないけど……思い出したのは、楽しかった思い出ばかり)

「ロレッテちゃん、あたりが暗くなってきてから、余りキョロキョロしてると足元をとられるよ~そうだ、魔法で灯りをつけよう」

 "ライト"とシルベスター君が唱えると、丸い光の玉がいくつも現れて周りが明るくなる。これなら足元を取られない。

「明るいわ。ありがとうシルベスター君」
「フフ、どういたしまして」
 
 シルベスター君が出してくれた灯りのおかげで、そこまで森の中を暗く感じなかった。そのシルベスター君の首に鎖のような首が巻き付く――日が暮れると森から出れないと言っていた。

(コレがそうなのね)

「ごめんね、ロレッテちゃん。もう森が怖くても帰れないね~安心してボクが守るし。虫除けの草もあるから大丈夫!」

「……そうね、シルベスター君がいるから心強いわ」

 頼もしいシルベスター君と笑っていた。そんな私のお腹がクウッ~と鳴る。お腹も空いたから夕飯にしよっかと、シルベスター君と近くの小川まで案内しもらう。小川についた私は昔に両親としたキャンプのときの記憶を頼りに、乾燥した枝を集めて、石を並べて小さなカマドを作った。

「カマドはこれでいいかな? 次に火をつけないと」
「ほぉ~ロレッテちゃん手際がいいね」

「え? ああ、本で読んだことがあるの」

「本? そっかぁ~カマドに火はボクがつけるね~」

「お願いするわ」

 出発前に【収納箱】にしまった小麦粉と卵、バター、水とフライパンを取り出して、パンケーキを作る準備を始めた。
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