嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

68

 王城でのお茶会の日。
 お茶会の場にいた癇癪王子は、お茶会に来ていた可愛い女の子に一目惚れをしました。だけど、自分の性格と魔法のせいで声をかけれません。――どうしたらいいんだろう。

 その一目惚れをした女の子は、兄王子の婚約者候補でした。兄王子は魔法もでき素敵で勝ち目がないけど、その子には僕を見て欲しいけど……怖い。

「あなた……顔色が悪いけど、どうしたの?」

 女の子が心配して、癇癪王子に声をかけました。
 嬉しいけど、気持ちの昂りを混じました。
 まずい、いつものように魔法が暴発しするかも、癇癪王子はその場から逃げてしまいます。

(せっかく僕を心配して声をかけてくれたのに、話せなかった)

 癇癪王子は城の奥の庭園に逃げて泣き、魔法が漏れて周りは凍り始めていました。そこに女の子が来てしまったのです。

「僕の側に、こ、来ないで……」

 魔法が暴発すると、同時に氷の魔法が女の子を襲いました。危ない、僕のせいで……女の子がケガをする。危機一髪、女の子は城の魔法使いの防御魔法に守られていました。よかったと思った癇癪王子の瞳に映ったのは、女の子の頬のキズでした。

(僕があの子にケガをさせてしまった)

 癇癪王子の瞳にポロポロ涙が溢れます。僕は兄のようになれず……怖がられて、あの子にも会えない。悲しみに落ちた癇癪王子の手を誰かが握ったのです。

「え?」

 癇癪王子の手を握ったのは女の子。
 その子はキラキラした瞳で、癇癪王子を見て。

「あなたズゴイのね。とても綺麗だったわ」

 氷の魔法に襲われたのに、頬にケガもしたのにその子は笑ってくれた。ますます好きになった癇癪王子は、強くなろうと決めて日々特訓をはじめます。

 特訓の成果がでて、癇癪もほぼ起こさなくなった王子は、あの子の婚約者になりたい王に願いました。

「お前の魔法はまだ制御できない為、知られてはいけない。その令嬢の記憶は消さなくてはならない、それでもいいのか?」

「かまいません」

 王は認め、癇癪王子はその子の婚約者となります。
 癇癪王子はその子に認められたくて、自分を好きになってもらいたくて、今も努力しています。

「その王子はさ。多くの魔力を持って生まれちゃって、本人で抑えることができなくて、魔力を抑える刻印を記したんだ……でも、余り効果がないんだって」

 この物語、本当のことみたい。

「刻印の効果がないとどうなるの?」

「その子が泣く、癇癪を起こすと魔法暴発しちゃうんだ、それをオーバーフローと言って、魔力がだだ漏れになっちゃうの」

(泣くと魔力がだだ漏れるなんて、オルフレット様みたい)

「シルベスター君、魔法が漏れるとどうなるの?」
 
「うんとね。感情の昂りによって魔力が溢れて部屋がすべてカチンコチンな凍るんだ。ボクも何度かこんな風にカチコンチンなったよ」

 シルベスター君はカチコンコチンのポーズをとった。

「フフ、大変だね」
「もう、大変だったよ」
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