嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

シルベスター

「笑い疲れて眠っちゃったね? ……ロレッテちゃん、この話が、自分の話だって気付いたかな? ボクは師匠の許可がなくて姿を表せなかった……心が傷付いたときは子犬の姿でいたけど」

 初めてオルフレットと出会った時も、ボクは君達の側にいたんだ。オルフレットがロレッテちゃんに一目惚れをして、照れと動揺して魔法を暴発させちゃって旧庭園を凍らせた。
 
 普通なら怖がって泣いてしまう所なのに、君は怪我をしながら「綺麗どうやったの?」と、オルフレットに微笑んだ。

(ロレッテちゃんはそれで、ケガをしたのに驚かないなんてすごいや)

 その場に今みんなも驚いていたよ。だけど、王族が強大な魔力を持っていると知られるのはダメだから。師匠が彼女を眠らせて、キズを治して記憶を書き換えたんだ。

 婚約者となったロレッテちゃんと、オルフレットはほんとうに仲が良かった。この2人は運命なのかなって信じた矢先に、オルフレットは1度だけ君を裏切った。

 オルフレットの心は――貴族じゃない女性にひとときだけど揺れて、興味を持ったんだ。ロレッテちゃんがショックで倒れたときボクは彼女を連れ去ろうとしたけど、すぐに気付いた師匠に止められた。

『シルベスターお前は手を出すな! なるようになる』

 そのときのボクは頷くことしできなかった。

 あの後――師匠に聞いた話だと、オルフレットは自分の気持ちに気が付いたって聞いた。

 なんだかボクは腹が立った。なんてね……今回の薬草もあの癇癪王子の魔力なら、図鑑を買ってもおかしくないけど。師匠の隠し文字まで気付かず、誰がに眠らされちゃうなんて、まだ弟子のオルフレットはダメダメだね。

 ――まっ、ボクは文字が読めないけど!
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