嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

69

 早朝、ロレッテはモフモフのシルベスター君に包まれながら目が覚める。暖かなシルベスター君のおかげでよく眠れた。

「おぉロレッテちゃん、昨日より顔色も良くて、魔力も回復してるね~よく寝れた?」
 
「はい、よく寝れました」

「それはよかった。でも髪に寝癖が付いてるよ」

「あら、ほんとうだわ」

 ロレッテは、魔除けのクラフト草をさしたままと髪を結ったまま寝てしまい、薬草の香りと髪には寝癖がついていた。

「ボクが水を出してあげる」

 そう言い、シルベスター君は魔法で水を出してくれた。その水で身なりを整えたあと、昨日、残ったパンケーキで朝食をとる。

「イチゴジャムのっけ、パンケーキは甘くて美味しい、もう1枚パンケーキ食べたい」

 シルベスター君はイチゴジャムをつけた、パンケーキが気にいったらしく、口の周りをジャムだらけにして食べている。

(ジャムをいっぱいつけて食べてる、可愛いわ)

 ロレッテは、モフモフで可愛いシルベスター君を見ながら、腹ごしらえを済ませた。昨夜から暖をとった、焚き火の後始末を終わらせると、シルベスター君は立ち上がりロレッテに。

「さぁロレッテちゃん、女神の涙――デーアラルム草の採取の時間だ」

 と告げる。
 
「え? デーアラルム草の採取の時間?」

 なんのことかわからなくて、ロレッテはシルベスター君に聞き返すと、デーアラルム草は早朝にしか咲かない花だと教えてくれた。少しでも時間が過ぎると花が萎み、薬草としの価値がなくなるとも教えてくれた。

 その花が咲く場所は偽物の花も多く咲く場所。そして、デーアラルム草の花が萎むまでは30分――それまでに見つけてね。とシルベスター君は言った。

「30分までに、偽物の中から花を見つけるのですか? だったら、一緒にシルベスター君もデーアラルム草を探してください」

 シルベスター君は困った顔をして、首を振り。

「ごめんね。一緒に探すのは無理なんだ。デーアラルムの花を採取できるのは、あの図鑑の隠し文字が読めた人限定なんだ」

 あの、図鑑の隠し文字が読めた人限定。
 そうなると、読めたロレッテにしか採取できない。

(私だけにしか採取出来ないなんて、すごく緊張するけど。みんなの為にここまで来たのだもの、絶対にデーアラルム草を持って帰るわ)

 ロレッテは気合を入れた。



「ほら早くしないと花が萎んじゃうよ。山頂へ向かうから、ロレッテちゃんボクの背中に乗って!」

「はい、シルベスター君」
「よし乗ったね。急ぐから、しっかり捕まっていて」

 シルベスター君の背中にしがみつくと、軽快に森の中を走り、山肌をピョンピョン軽やかに登って行く。ロレッテはあまりの、シルベスター君の速さに必死にしがみつく。


 そして、ものの数分で山頂についた。

「ロレッテちゃん、山頂に着いたよ」

 シルベスター君の言う通り、ロレッテが目を開けると、目の前に色とりどりの花が咲いていた。

「ここが……山頂?」

「そそ、ここが、ベルク山の山頂だよ」

 様々な花が咲くこの中から、解毒薬になる薬草を見つけなくてはならない。ロレッテは緊張で、フウッと息を吐きた。


 
 
 ❀

 

 シルベスター君の背中に乗って、ロレッテはベルク山の山頂まで連れてきてもらった。そのロレッテの目の前には、王城の庭園くらいの開けた所に、色とりどりの花が咲いている。

「ロレッテちゃん、この中に必要なデーアラルム草があるよ」

「わかった」

 時間は30分――ロレッテはこの花達の中から"デーアラルム草"を、見つけなくてはならない。
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