嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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「ロレッテちゃん、がんばって!」

 シルベスター君に「がんばる」と声援を受けて、ロレッテは咲夜、森に入るときに使った【鑑定魔法】を使用すると。

 ポフ、ポフとウィンドが現れて、花達の名前を教えてくれる。近くの黒い花に【悪魔の囁き】と書いてある。

「悪魔⁉︎」

 その名の通りで、説明に"嘘をつき幻覚を見せる毒花"だと記されていた。

(この花の中には毒花もあるのね……)

 ロレッテはもう一度、気合いを入れ直して鑑定した。

 つぎの黄色の花は【どこにでも咲く花】説明にも"どこにでも生える花"だと書いてあった。次の薄ピンクの花も【どこにでも咲く花】その次も次もだった。

(このあたりは普通の花か……)

「ロレッテちゃん、後20分だよ」

 側で見守るシルベスター君が時間を測ってくれていた、ロレッテは「ありがとう」と伝えて、目的の花を探した。
 


 残り15分。

 この紫色の花は【悪魔の叫び】。この花は摘もうとすると『ギャア、ギャア』叫び、この声を聞いた者は"鼓膜に異常をきたす"と書かれている。

 

 変わった花々は見つかるもの、肝心のデーアラルム草は見つからず、残り時間はあと5分となった。

 終わりの時間が迫り、ロレッテは焦りだす。

「どこよ! ――どこ? どこにデーアラルムの花があるのよ!」



 後1分。


(花が見つからない……)

 ロレッテはさらに焦り、足がもつれて花の中に転んでしい、その弾みで集中が途切れ、ロレッテは泣いてしまった。

「見つからない……デーアラルムの花がどこにもない……これではオルフレット様を助けれない!」

 そんな涙目のロレッテの瞳は"キラッ"と光る、何かを足元で見つけた。

(不思議な花……透明で、すごく小さいわ)

 その小さな、小さな透明な花をロレッテは【鑑定】し、鑑定結果に大泣きした。

「やった、やったわ……シルベスター君、デーアラルムの花を見つけたわ」

「花を見つけた? やったね、ロレッテちゃん! 花が散る前に積んで、収納箱に入れて」
 
 ロレッテは見つけた、小さくて透明な花をやさしく摘み、すぐ収納箱にしまったとたん。大地が光り、いままで咲きほこっていた花達が一瞬で消え、辺り一面、緑の草が生い茂る大地へと変わった。

「え、ええ! 花畑が消えた?」
 
「よかったね、ロレッテちゃん! デーアラルムな花がこのまま見つからなかったら、魔女の魔法で花が消えちゃって、次に咲くのは1年後だった」

 と、シルベスター君はニコニコと、怖いことを言った。
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