嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
9
ロレッテはメアリスの背中を見送りながら、もう一度考えた。オルフレット殿下以外の、メアリスさんと周りにいる人たちの心の声は、最後まで聞こえなかった。それがどうしてなのか、ロレッテにはわからなかった。
(少し怖いですが、オルフレット殿下の心の声には……ものすごくドキドキしたわ)
――どうにかなってしまいそうだった。
帰りの馬車の中で、ロレッテは顔を真っ赤にして頬を抑えた。
夕食のときロレッテは、明日オルフレット殿下がお茶に来ることを両親に伝えた。
「ロレッテ、それは誠か?」
「まあ、ロレッテよかったわね」
両親は喜び、お父様は高級茶葉を用意すると張り切っていた。ロレッテは夕食後に厨房でオルフレット殿下の好物、バタークッキーの下準備をコック長と始めた。
(オルフレット殿下は甘さは控えめで、バター風味が強い風味がお好き)
ロレッテは想いを込めて、生地を作り寝かせた。
明日、美味しいと、オルフレット殿下に言ってもらえますようにと。
❀
コック長とメイドにお茶の準備と、バタークッキーを頼んだ。メイド、コック達もみんな張り切って、庭にお茶の準備をしてくれている。
(オルフレット殿下とのお茶会……緊張するわ)
学園に向かうと、馬車着き場にオルフレット殿下の側近、カウサ様が私を待っていた。
「おはようございます、カウサ様」
「ロレッテ様おはようございます。オルフレット殿下はまだ書類整理に追われていまして……本日は学園には来れませんが。午後のお茶会には必ず、向かうと仰っておられました」
「まあ……」
――オルフレット殿下は学園に来られないほど、お忙しい。
「カウサ様、オルフレット殿下はご無理をなさってはおりませんか? もし、無理でしたら……」
「ロレッテ様、お茶会をお辞めなるとは仰らないでください!」
ロレッテの言葉を遮り、いつもオルフレット殿下の隣で穏やかなカウサ様が珍しく声を上げた。それに驚き目をパチクリさせると、カウサ様も同じだったみたいで慌てて頭を深々く下げた。
「これは……失礼しました」
「いいえ、オルフレット殿下に午後、屋敷の庭でお待ちしておりますと伝えてください」
「ありがとうございます……あの、不躾ですが。ロレッテ様に一つ、お願いがあります」
カウサ様が胸に手を当てて、畏まった。
「私にお願いですか?」
「はい、ロレッテ様にしか出来ないことなんです。オルフレット殿下を本日のお茶会で癒してあげてください」
(私が、オルフレット殿下を癒す?)
カウサ様は頼みますとまた深く頭を下げて、足早に去っていってしまった。
「でも、オルフレット殿下を……どう癒やせばいいのかしら?」
しばらく悩み。昨日のオルフレット殿下の声を思い出す。昨日の殿下はロレッテが側にいれば癒されると仰っていた。
❀
学園が終わってすぐ屋敷に戻ったロレッテは、メイドに頼み、今年新しく作ったドレスを着付けてもらった。着付けが終わり姿見に写して思う……ここまで胸の見えるドレスを、オルフレット殿下の前ではロレッテは着たことがなかった。
(ここまでやって、オルフレット様に引かれてしまったら――当分の間、立ち直れないわ)
「ロレッテお嬢様、お綺麗ですよ」
「ありがとう、リラ」
庭のスペースに準備された、パラソル付きのテーブル。お父様が用意した高級茶葉、オルフレット殿下のお好きな、バタークッキーとケーキスタンド。
殿下……いいえ、オルフレット様を迎える準備は滞りなく終わった。
――カウサ様、ロレッテなりに彼を癒します!
「ロレッテお嬢様、オルフレット殿下がお付きになりました」
「はい、いまお迎えに向かいます」
オルフレット様をお迎えに向かうと、屋敷前に王族が使用する馬車が止まっていた。そこから黒い軍服を着た、殿下が降りてくる。
(ぐ、軍服? 普通のお茶会ですのに正装でいらしたわ? でも、オルフレット様にお似合いで素敵)
「ご機嫌よう、オルフレット様」
「ロレッテ嬢、お茶へのご招待嬉しく思う」
私を見て、オルフレット様は優しく微笑んだ。
〈あぁロレッテ、今日は更に美しい。それは、初めて見るドレスではないか? ……なんて立派な……おっ、〉
(おっ? お、のその後は言わないのですか?)
その後の言葉は続きませんでしたが、オルフレット様の視線がロレッテの胸の所で止まっていた。そんなに胸ばかり見つめられて照れます。それに、あの後に続く言葉もわかりました――もう、オルフレット様は。
〈凄くいいっ! 夜通し頑張って書類を終わらせてよかった。これはボクへの最高なご褒美だっ!〉
(これが? オルフレット様のご褒美⁉︎)
「ロレッテ嬢?」
驚き固まっていました。
「オルフレット様、庭へご案内いたしますわ」
「あぁ頼むよ。コローネル公爵家の庭はいつも丁寧に手入れされているね」
「オルフレット様にそう言っていただくと、庭師も喜びますわ。今日はオルフレット様がお好きな、バタークッキーをご用意しましたのよ」
ロレッテの案内でオルフレット様と後ろを歩く、カウサ様は手に平たい木箱を持っていた。彼は庭のテーブルに着くと、木箱をテーブルの上に置き蓋を開けた。
その箱の中には少し大きめな苺と、苺ジャムが入っていた。
「ロレッテ嬢にお土産だ、苺好きだったろ?」
「えぇ苺は好きですわ。オルフレット様ありがとうございます」
「今朝、採れたての新鮮な苺だ」
「まあ、美味しそうですわ」
〈頬をそんなに綻ばせて可愛い。持ってきてよかった。絶対、ロレッテにこの苺をあーんをする!〉
(オルフレット様?)
そこには爽やかに微笑む、オルフレット様がおりました。
(少し怖いですが、オルフレット殿下の心の声には……ものすごくドキドキしたわ)
――どうにかなってしまいそうだった。
帰りの馬車の中で、ロレッテは顔を真っ赤にして頬を抑えた。
夕食のときロレッテは、明日オルフレット殿下がお茶に来ることを両親に伝えた。
「ロレッテ、それは誠か?」
「まあ、ロレッテよかったわね」
両親は喜び、お父様は高級茶葉を用意すると張り切っていた。ロレッテは夕食後に厨房でオルフレット殿下の好物、バタークッキーの下準備をコック長と始めた。
(オルフレット殿下は甘さは控えめで、バター風味が強い風味がお好き)
ロレッテは想いを込めて、生地を作り寝かせた。
明日、美味しいと、オルフレット殿下に言ってもらえますようにと。
❀
コック長とメイドにお茶の準備と、バタークッキーを頼んだ。メイド、コック達もみんな張り切って、庭にお茶の準備をしてくれている。
(オルフレット殿下とのお茶会……緊張するわ)
学園に向かうと、馬車着き場にオルフレット殿下の側近、カウサ様が私を待っていた。
「おはようございます、カウサ様」
「ロレッテ様おはようございます。オルフレット殿下はまだ書類整理に追われていまして……本日は学園には来れませんが。午後のお茶会には必ず、向かうと仰っておられました」
「まあ……」
――オルフレット殿下は学園に来られないほど、お忙しい。
「カウサ様、オルフレット殿下はご無理をなさってはおりませんか? もし、無理でしたら……」
「ロレッテ様、お茶会をお辞めなるとは仰らないでください!」
ロレッテの言葉を遮り、いつもオルフレット殿下の隣で穏やかなカウサ様が珍しく声を上げた。それに驚き目をパチクリさせると、カウサ様も同じだったみたいで慌てて頭を深々く下げた。
「これは……失礼しました」
「いいえ、オルフレット殿下に午後、屋敷の庭でお待ちしておりますと伝えてください」
「ありがとうございます……あの、不躾ですが。ロレッテ様に一つ、お願いがあります」
カウサ様が胸に手を当てて、畏まった。
「私にお願いですか?」
「はい、ロレッテ様にしか出来ないことなんです。オルフレット殿下を本日のお茶会で癒してあげてください」
(私が、オルフレット殿下を癒す?)
カウサ様は頼みますとまた深く頭を下げて、足早に去っていってしまった。
「でも、オルフレット殿下を……どう癒やせばいいのかしら?」
しばらく悩み。昨日のオルフレット殿下の声を思い出す。昨日の殿下はロレッテが側にいれば癒されると仰っていた。
❀
学園が終わってすぐ屋敷に戻ったロレッテは、メイドに頼み、今年新しく作ったドレスを着付けてもらった。着付けが終わり姿見に写して思う……ここまで胸の見えるドレスを、オルフレット殿下の前ではロレッテは着たことがなかった。
(ここまでやって、オルフレット様に引かれてしまったら――当分の間、立ち直れないわ)
「ロレッテお嬢様、お綺麗ですよ」
「ありがとう、リラ」
庭のスペースに準備された、パラソル付きのテーブル。お父様が用意した高級茶葉、オルフレット殿下のお好きな、バタークッキーとケーキスタンド。
殿下……いいえ、オルフレット様を迎える準備は滞りなく終わった。
――カウサ様、ロレッテなりに彼を癒します!
「ロレッテお嬢様、オルフレット殿下がお付きになりました」
「はい、いまお迎えに向かいます」
オルフレット様をお迎えに向かうと、屋敷前に王族が使用する馬車が止まっていた。そこから黒い軍服を着た、殿下が降りてくる。
(ぐ、軍服? 普通のお茶会ですのに正装でいらしたわ? でも、オルフレット様にお似合いで素敵)
「ご機嫌よう、オルフレット様」
「ロレッテ嬢、お茶へのご招待嬉しく思う」
私を見て、オルフレット様は優しく微笑んだ。
〈あぁロレッテ、今日は更に美しい。それは、初めて見るドレスではないか? ……なんて立派な……おっ、〉
(おっ? お、のその後は言わないのですか?)
その後の言葉は続きませんでしたが、オルフレット様の視線がロレッテの胸の所で止まっていた。そんなに胸ばかり見つめられて照れます。それに、あの後に続く言葉もわかりました――もう、オルフレット様は。
〈凄くいいっ! 夜通し頑張って書類を終わらせてよかった。これはボクへの最高なご褒美だっ!〉
(これが? オルフレット様のご褒美⁉︎)
「ロレッテ嬢?」
驚き固まっていました。
「オルフレット様、庭へご案内いたしますわ」
「あぁ頼むよ。コローネル公爵家の庭はいつも丁寧に手入れされているね」
「オルフレット様にそう言っていただくと、庭師も喜びますわ。今日はオルフレット様がお好きな、バタークッキーをご用意しましたのよ」
ロレッテの案内でオルフレット様と後ろを歩く、カウサ様は手に平たい木箱を持っていた。彼は庭のテーブルに着くと、木箱をテーブルの上に置き蓋を開けた。
その箱の中には少し大きめな苺と、苺ジャムが入っていた。
「ロレッテ嬢にお土産だ、苺好きだったろ?」
「えぇ苺は好きですわ。オルフレット様ありがとうございます」
「今朝、採れたての新鮮な苺だ」
「まあ、美味しそうですわ」
〈頬をそんなに綻ばせて可愛い。持ってきてよかった。絶対、ロレッテにこの苺をあーんをする!〉
(オルフレット様?)
そこには爽やかに微笑む、オルフレット様がおりました。