あなたに出会って世界が変わる
今日は金曜日ということもあり、酔っ払いが多くやってくる。夏鈴はあの日みたいに怖がることはないが、男性が苦手であることは変わらないようだ。

「お姉ちゃん。今日も働いてるんか。俺が常連なん分かってるやろ。まけてや。」

酔っ払いの中年の男性が夏鈴に絡む。

「いつも来ていただいてありがとうございます。ですが、お安くすることは出来ません。申し訳ありません。」
夏鈴は丁寧に断った。

「お姉ちゃんは大事な常連客を手放す気か。なんぼここに使ってると思ってるねん。しっかり考えろ、気の利かん堅物姉ちゃんやなー。」

「すみません。」

「すみませんちゃうねん。お姉ちゃんいつもダサいし、気も利かへんし、モテへんやろ。男とやったことあるか。」

夏鈴はどんどん俯いてしまった。そして、カタカタと震え出した。
陸斗はすかさず間に入った。

「お客様どうされましたか?」

「このお姉ちゃんは気が利かんから注意してたわ。こんな気の利かんダサい女レジに置くとか、この店も終わりやな。」
そんな言葉を発する客に陸斗はイラッとした。

「彼女はいつもきちんと仕事をこなしています。ですが今回、不届きがあったようでしたら、お聞かせください。こちらの店舗はカメラを設置しています。真実をお伝えいただければ、対応させていただきます。」

陸斗の冷静な態度に怯んでもうええわと言って帰った。
< 29 / 203 >

この作品をシェア

pagetop