あなたに出会って世界が変わる
「はい。これ飲みな。」
陸斗は水を買って夏鈴に手渡した。
夏鈴は断ろうとしたが、陸斗の絶対受け取れという圧に負けてもらった。

「ありがとうございます。」

夏鈴は水を飲んで、ずっと俯いている。男の人の声がすると少し震えた。
何があったのか気になるが、聞き出せる雰囲気ではない。だが、少しでも恐怖心を減らしてやりたいと思った。

「夏鈴ちゃん。
俺の手触れる??絶対何もしない。夏鈴ちゃんが怖くなったら、離せばいい。だけど、もし触れたら、怖いのが少し減るかもしれない。」

そう言うと陸斗は手を差し出した。

「怖かったら初めは指1本でいい。触れるか?」

夏鈴は怖かった。だけど、誰かに助けて欲しかった。勇気をだして陸斗の指に触れた。

「大丈夫か?怖くないか?」

「はい。」

「少しずつ指の数増やせる?ゆっくりでいいからな。」

夏鈴は陸斗の指に自分の指を合わせていった。男の人の声がすると離しそうになる。だけど、陸斗が大丈夫だよと優しく声をかけてくれるので、離さずに全ての指を合わすことができた。

「夏鈴ちゃん。上手だ。怖くない??じゃあ手のひら全て合わせられる?」

「はい、、、。」

はいと言ったものの夏鈴はなかなか動けない。
少し冷静になれてきて、怖さというより、恥ずかしさがでてきた。陸斗の大きな手は初めは怖く感じたが、指から伝わるあたたかさに安らぎを感じた。夏鈴は男性と手を繋いだ経験はない。手の先にある陸斗の心配そうに見つめる瞳に照れてしまう。

陸斗は先ほどと少し違う夏鈴の表情を見逃さない。

「夏鈴ちゃん。
今度は俺から触れていい?怖くなったら言って、絶対離す。約束する。」

「分かりました。」

夏鈴の返事を聞き、陸斗はゆっくりと夏鈴と手を合わせた。夏鈴は伏し目がちだが、決して怖がっているようには見えない。そして、手を握った。
男性の声がする度に、陸斗は大丈夫と言いながら、手をギュッと握る。少しずつ声がしても震えなくなっていった。
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