無自覚な彼女はヴァンパイア様の溺愛に気づかない
麗央の返事にぎょっとする。

「名前ぐらい聞いとけよ。」

「…」

どうすることもできないこの状況に思わず頭を抱える。

もし、俺らのたまり場がばれてしまったら

「麗央、昼寝できなくなるぞ」

「…ちぇ」

女子どもが押し寄せるに違いない。

面倒くさい想像を膨らませてとにかく現実になりたくないに限る。

「ねぇーねぇー」

中庭のスタンドガラスにぶら下がっていると思いきや、

すとんっと降りてこちらに来る影。

「なんだよ、湊。今はそれどころじゃないんだ。」

今はこいつの戯言に付き合っている暇はない。早急にどうにかしないと

「さっきの女子これを落としてったんだけど。捨てといていい?」

そういうと女嫌いの湊がつまみあげるように

いろんな種類の花びらで彩られたハンカチをこちらに見せる。


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